不動産といえば多くの方はマイホーム計画時の土地探しや、新築建売住宅、マンションといったものを連想するでしょう。
住宅ローン返済や立地環境を意識しながら選んでいくイメージでしょうか。
しかし、不動産はマイホームに付随したものばかりでは無く「資産」としての側面があり、「投資」の対象としても扱われる事も皆さんご承知なはずです。
私のライフプランコンサルティングでも、近年の超低金利の中で、少しでも効率良い資産形成の手段として不動産投資への相談、ご質問をいただく事があり、既に実施している方も見受けられます。
確かに利回りの目論見は、銀行預金と比較すれば勿論ですし、株式運用と比較しても更に上回る様な期待値のものも目に留まるはずです。
近年株価だけで無く地価も上昇傾向な事も織り込むと、魅力的な運用の選択肢として映る方もいるのではないでしょうか。
しかしながら、資産運用の選択で忘れてはならないのが「リスク」と「リターン」の存在。
以前のコラム記事でも代表的な投資先ともいえる「債権」「株式」「不動産」の運用についてこれをまとめた事があります。
リスクとリターン両者を並べて検討しない事にはバランスを欠いた選択となってしまいます。それら特性について整理する必要性について説いております。
今回は代表的投資先とも言えるその3者の中で不動産投資は他の2つとは異なる特徴を持っており、その事についてお話しを加えたいと思います。
ズバリ不動産はマイナス金利の性質を持つと言う事です。
⬜︎ マイナス金利とは?
マイナス金利とは何でしょうか?
マイナスだからものすごく低い金利のことでしょうか?
我々の日常の生活に置き換えて考えてみましょう。
例えば身近な金融商品のお話。
銀行にお金を預ければ金利がもらえます(昨今は微々たる金額ですが)。
住宅ローンを借りれば元本返済に加え金利の負担が必要です。
金利とは貸せばもらえる、借りれば支払うという関係ですね。
更に日常的な社会生活においても同じです。
出先でお財布を忘れて友人からお金を借りたとします(スマホ決済ならスマホも忘れたとして)。
通常は「ありがとう!」であり、「後でお礼くらいしなきゃ」と思うかもしれません。
この「お礼」がいわゆる「金利」の存在です。
ところが逆にお金を貸してくれた友人の方がお礼をする世界。
これがマイナス金利なのです。
銀行預金であれば預金し続ければ金利を払わなければなりませんし、住宅ローンを借りれば元本は返しますが金利を貰えます。
中々想像が付きませんね。
「マイナス金利」というと「超低金利」を更に激しくしたモノの様な印象を持つ方もいるかもしれませんが、それどころでは無く全く価値感が逆転したものなのです。
そんなマイナス金利がなぜ不動産投資に当てはまるのでしょうか?
⬜︎ なぜマイナス金利?
株式投資と不動産投資の対比が分かりやすいと思います。
通常投資の損益は保有中に発生する「インカムゲイン」と手放した時の「キャピタルゲイン」に別けられます。
株式投資のインカムゲインは配当であり、不動産では賃料です。
配当益を得るには投資先の会社が利益を上げる事、賃料を得るには借り手を確保する事がそれぞれの条件となります。
一方キャピタルゲインは双方とも購入時と処分時の価格差です。
価格が上昇していればその差額が利益としてインカムゲインとは別個に期待できます。
しかしながら、目論見通りに配当や賃料収入があがるとは限りませんし、購入時よりも処分時の値が必ず上昇しているとは限りません。マイナスもありえます。
これらの要因がいわゆる投資のリスクという事になります。(冒頭ご紹介のコラム記事で詳しく解説しております)
つまりこれらの投資をしたからといって、必ず利益を上げられる訳では無く、損失に見舞われる事も十分に起こり得る事は皆さんご存知の事でしょう。
「なるほど、このリスクがマイナス金利か!」
と思われたかもしれません。
でも、リスクを内包している事を飛躍してマイナス金利だと言う訳ではないのです。
ここで申し上げるマイナス金利は不確実性の話ではなく、恒常的な性質に起因するものの話です。
これも例をあげて説明いたします。
株式、不動産投資双方に投資したが配当も賃料も入らなかったので手仕舞いにしたとしましょう。
この時、買値と同額で処分できればプラスマイナスゼロで利益も損失も生じなかった事になります。
(投資信託の手数料や賃貸管理費は除外して)
株式はこれで良いのですが、不動産はこれでは済みません。
何故か?
次の2点が株式とは異なります。
第一に保有中の公租公課の負担です。
不動産を保有するとその保有期間中に固定資産税や都市計画税といった税負担が生じます。
この負担は先程の収支プラスマイナスゼロの状態であっても減免される事はありませんので、負担額分マイナスに作用してしまいます。
第二に価値の自然減耗があります。
減価償却といった方が分かりやすいかもしれません。
不動産投資の対象は土地のみ(借地)では運用効率が悪いので、「土地+建物」両者セットの事業として運用する事が一般的です。
その場合に土地は償却資産ではないので自然減耗は原則ありませんが、建物の評価額は時間の経過による経年劣化は避けられず、徐々に減価し耐用年数を迎え無価値になります。
相場の変位を考慮しなければ、購入時と売却時の時間差分相当の建物評価額が低下するといいう事であり、建物のキャピタルゲイン的にもマイナスに作用するという事がいえます。
これら2点は株式投資には無い特性であり(債券投資にも)、不動産投資特有のもの。
つまり自然状態では不動産投資はその投資期間中はマイナス金利の作用が働くので、その分を見越した高い収益性を求める必要があり、結果として表面利回りが株式や債券での投資よりも高くなるのです。
もし「不動産投資はこんなに利回りが高いのです!」
と言った投資のお勧めを受けたとしても寧ろそれは当然の事。
冷静に自分自身のライフプランに見合った運用先を選択したいですね。