マイホーム計画を新築一戸建てで検討する際、間取りづくりは楽しさの反面、難しさに悩む方も多いのでは?
ハウスメーカーのプランニング提案に工夫はなされど、完成後の姿を想像する難しさもその一つでしょう。
大手ハウスメーカーなどではCG的なプレゼンを導入している会社もあり、雰囲気はだいぶリアルに感じ取ることができる様になってきましたが、全てが現物感覚とまではいきません。
実空間の感覚的な部分までを再現するには、如何にこれらのツールでも限界があります。
新築完成後に想像と実際のギャップに気付いても手遅れです。
勘違いが原因の思わぬところでの失敗は避けたいですね。
特に図面の理解と出来上がりの間に勘違いが生じ易い意外なポイントとして、階段の存在がある事にお気付きでしたか?
今回は間取りのチェックポイントとして、階段に着目してお話ししてみたいと思います。
⬜︎ 階段の基準
始めに階段部位の名称と建築基準法の要件をまとめてみましょう。
右図が階段部位の名称です。
1段あたりの高さを蹴上げ(けあげ)、段板から蹴込み(けこみ)分を除いた寸法を踏面(ふみずら)と呼びます。
建築基準法では一般住宅の場合、蹴上げ23㎝以内、踏面15㎝以上となっており、加えて階段の有効幅は75㎝以上ですが手摺の出幅が10㎝以内の場合はこの分を除外して計算できます。
また、回り階段の場合、踏面計算は採寸する位置で寸法に差が出てしまうので、回り内側から30㎝の部分で採寸する事となっております。
⬜︎ 使い易い階段になっている?
間取り図を読み取る中で階段に目を向ける場合、どこに着目しますか?
「ここから2階に上がるのか」
「リビング階段ってどんなものだろう?」
「手摺は付いているのかな?」
「住宅展示場で見た吹き抜けもいいかな」
あえて議題としての要素は余り思い浮かばないのではないでしょうか?
強いて言うと大きなテーマとして持ち上がる話題はリビング階段くらいのもので、間取りに関する検討の中では他の部屋と比較しても案外サラッと通過してしまう事が多いようです。
でも、例えば一般的によく見られる2階建てで上階に寝室や子供部屋を配置した間取りであれば、家族皆が1日に何度となく階段を行き来し利用頻度の高いゾーンな訳ですから、使い易い階段になっているか注意を払うべきではないでしょうか。
まず、階段の使い易さといえば、一番の注目すべき点は傾斜の具合です。
余り急すぎては昇りにくいし、時には危険です。
しかしながら、急な階段か緩い階段かを間取り図から読み取るのは中々大変です。
仮にCGでリアルな画像を見せられても、感覚を掴むのは容易ではありません。
となれば、示されている数値の読み取りが重要です。
前述の通り建築基準法ではこれの最低基準を設けていますが、これをクリア=使い易いという訳ではありません。
あくまでも最低基準が示されていると理解した方が無難でしょう。
それではどの位が理想値になり得るのでしょうか?
踏面=T、蹴上げ=Rで示した場合
55㎝ ≦ T+2R ≦ 65㎝かつT ≧ 19.5㎝
角度にして40°~45°程度が概ね昇降し易さの目安といわれます。
それでは間取り図から読み取るにはどうすれば良いのでしょうか?
右の様な階段の場合にどこに注目すれば良いのか見てみましょう。
まず踏面寸法は直階段部分寸法を段数で割れば良いので
91㎝/4段≒22.7㎝となります。
問題は蹴上げです。
1階床面~2階床面の高さを階高と呼び、これを段数で割ります。
しかし、階高は平面図からは読み取れません。
外観を描いた立面図に記載されている場合がありますが、明記されていない場合は担当者に確認する必要があります。
例えば階高300㎝の場合、図の段数は15段で昇りきりになっていますので、300/15=20㎝と読み取れます。
これを先の式で計算すると、22.7+20×2=62.7、踏面19.5㎝以上、角度45°以下も満たしており、この点ではクリアした状態という事が読み取れます。
但しこれは直線部分の計算に過ぎません。図面上の階段は回り部分が含まれており6段回りで展開する状態です。
回り部分の感覚の個人差で評価が分かれる所でもあります。(因みに6段回りは一般住宅には見られますが、住宅展示場で採用しているケースは余り無いはずです)
念の為に、現物の6段回りを実体験して使い心地を確認しておいた方が間違いが無いでしょう。
⬜︎ 階段下をどう使う?
階段の昇降具合は、直接的な評価として最重要ですが、付随して注意を払いたいのが階段下の活用方法です。
階段の昇り始め付近の階段下部は高さが十分に確保出来ませんが、昇りきりの直前ともなれば相応の空間が見込めますので、これを有効活用しない手はありません。
この場合、活用方法の代表格といえば収納とトイレが挙げられます。
収納であれば収納物に合わせて臨機応変に使い回せる、トイレも多少であれば天井高に制約が有っても不便さはさほどでは無いとの考えに基づく対応です。
とは言いながらも設置具合によっては、全く支障が無いとは言い切れない状態の仕上がりとなってしまう事も。
これも図面の数値読み取り術を心得ておけば無用な失敗を避けられます。
先程同様例をあげて見ていきましょう。
右図は階段下にトイレを配置した間取り。
よく見かけるパターンだからOKとは限りません。
途中でトイレ上部に掛かりますが6段回りとします。
(通常は2階間取り図で確認します)
蹴上は先程の方法で計算し、同じく20㎝とします。
図面より8段目以降がトイレ頭上に掛かるのが読めます。
そうしますと1階床面からの段板の高さは8段目160㎝、9段目で180㎝です。
下部天井高はそこから概ね5㎝程度下がりますのでトイレ奥の8段目下は155㎝、9段目下は175㎝程度となってしまいます。
ご自宅のトイレにメジャーを当ててイメージしてみてください。
「OK」な方、「せっかくの新築でこれはチョット」と言う方、恐らく評価は分かれるはずです。
勿論問題なければそれで良しなのですが、その仕上がり状態を察知できず新築完成後の状態に窮屈さを感じ後悔しても手遅れです。
これは収納の場合も同じ事。
有効高が分からずに納める予定のものが入らなかったでは元も子もありません。
「大丈夫!結構広いですよ」との説明だけを鵜呑みにせず、しっかりと確認しておくことをお勧めいたします。
見落としがちな階段のチェックポイント、間取り図から読み取れる情報ばかりでは無いところが要注意。
細部まで目配りし新築完成後に勘違いに気付く事のない様に注意を払いたいですね。
勿論、パートナーズライフプランニングの「マイホーム購入サポート」コンサルティングでは皆様の家づくりにおける細かな部分も見逃さずアドバイス。
満足いくマイホーム実現をお手伝いいたします。
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