住宅コンサルタントとしてマイホーム計画の相談を受ける際に、住宅資金計画は住宅ローンにとどまらずライフプラン全体を見通して不安の無い案を立てます。
将来に向けたライフプランを考えた時に、住宅ローンを疎かに扱えないのは当然ですが、蓄えをどの様にして準備していくかも重要なテーマです。
お金を蓄えるといっても目的はひとつではありません。
毎月のお給料のやり繰りから、夏休みの家族旅行の旅費準備、来年買い換える予定のマイカーの資金準備といった身近なお金の管理もあれば、もっと将来的な子供の大学就学時の教育資金準備や自分自身が老後を迎えた時の老後資金の様な先の長い課題に関わるものもあります。
それぞれどの様な方法で蓄えをしていくのが良いのでしょうか?
例えば「貯金箱」でお金を蓄えたらどうなるか。
いつでも身近に蓄えが存在する安心感はあります。必要であれば直ぐに取り出せます。
しかし、入れたお金が100万円であれば(どんなに大きな貯金箱でしょう!?)5年経とうが10年経とうが中身は100万円に変わりはありません。
つまり利回りゼロという事です。
これでは効率が悪すぎる。「利回り」を期待したい。と考えた時には何らかの金融商品で資産運用を試みる必要があります。
そこで一番着手しやすいのが銀行の預金口座に資金を置いておく事ですが、銀行口座はそもそもが低利な上に、世の中折からの超低金利が重なり、利回りと呼べるほどの効果は期待でない状態です。
そこで昨今、もっと積極的な資産運用に関心を持つ方々が増えいるのではないでしょうか。
NISAやイデコといったものの話題も耳にする機会が多いはず。
しかし、NISAやイデコはあくまでも制度的なものでありベースとなる金融商品は別に存在します。
このベースとなる金融商品はいくつかの種類がありますが、「債券」「株式」「不動産」の三つがその代表格といえるでしょう。
資産運用考える上ではこれらの特徴を理解するのがまずは入口です。
⬜︎ リターンとは?
利回りを期待するということは端的に言えば利益を期待するということに他なりません。
そうした中、何で資金運用すれば良いのだろうか?と考えた時に
「日経平均株価がバブル後最高値を更新!」
といった様なニュースを耳にすると
「株で運用すれば儲かるのかな?」「高値が続いているのなら自分も・・」
この様にリターンを期待する心理が働く反面、
「リスクは無いのだろうか?」「安全で高利回りの運用先は無いのかな?」
などといった様にリターンばかりではなく、リスクの存在も気になりはしないでしょうか。
リスクとは直接的に「危険」を指すものではなく、「不確実性」を表すものであり、以前にも他のコラム記事でこのお話をいたしました。
金融商品に置き換えれば、リスクの高いもの程、利益と損失の幅が大きなものと言えます。
つまり利回りはプラスにもなるしマイナスにもなり得るのです。
それでは利回り=リターンはどの様にして生まれるのでしょうか?
このメカニズムを理解していれば資産運用先を判断する手掛かりになるはずです。
まずこれを考える際、リターンを以下の2つの観点に分けてお話しした方が理解しやすいはずです。
◆ インカムゲイン
◆ キャピタルゲイン
⬜︎ インカムゲイン
インカムゲインとはその資産を保有している間に発生する利回りを指す点では債券、株式、不動産は共通していますが、利回りの発生原因はそれぞれ異なります。
<債券>
債券運用のリターンとは端的にお金を貸す事で発生する金利を指します。
通常第三者との間で、お金がタダで貸し借りされる事はありません。
貸手は自分のお金が拘束されるのですからその分の見返りを求めますし、借手はお金を貸してもらう為には元本の他にお礼としての金利を加えて返すことを約束しなければ誰も貸手は現れないでしょう。
まずはこれが金利です。
問題はその水準です。
突然ですがお金を貸す場合、信用度の高い相手と低い相手ではどちらに貸したいですか?
寓問ですね。それは信用度の高い相手に決まっています。しかも一番に信用できる相手に。
但し、借手の信用度は一律ではありません。
そうなると信用度の一番高い者には貸手がたくさん現れますが、それに劣る者には貸手が現れない事になってしまいます。
反対に信用度の劣る者たちはどうすればお金を貸してもらえるでしょうか?
「信用してくれ!」といっても既に信用度が劣っているのですからこれでは効果がありません。
この場合の方法はひとつ!
「たくさんお礼を致します」
つまり金利を高くしますから貸してくださいという事です。
これであれば危険を回避したい人は避けますが、多少の危険を伴っても高い利回りを狙う人との間では貸し借りが成立します。
また、債券は開始時点で金利と期限が設定されこれを厳守しなければなりません。
これにより貸手はその資金で借手が効果を上げようと上あげまいとに関わらず、約束の期日に元本に約束した金利を加え償還される事となります。
この事から債券は一般的に安全資産に分類されます。
但し、期日の前に相手が倒産するなどして債務不履行が起きた場合はそうはいきません。
この場合は元本も金利も得ることができなくなり、これが債券運用のリスクとなります。
<株式>
債券運用はお金を貸す行為であり、期日にその資金は返却されますが、株式に期限はなく「貸す」に対し「あげた」に近いニアンスです。
その点で投資を受ける側からすると借りたお金よりは、使い勝手の良いお金と言えましょう。
しかし、タダでお金をあげるわけでは無く、当然見返りあっての話です。
この見返りとは提供した資金で事業を行いそこで生まれた利益の分け前を受け取る事を指します。
この場合の利益とは、企業が売り上げ→原価を払い→人件費等経費を払い→税を納め→最終利益
つまり純利益があがればそれがいわゆる分け前の原資となり、「配当金」という名目で株主に支払われます。
これが株式運用のインカムゲインです。
但し、お気付きでしょうか?
配当金を受けるには投資先がきちんと利益をあげている事が条件となります。
金利であれば相手が倒産でもしない限り確実に受け取れますが、配当は原則的には赤字の会社に投資しても期待できないという事です。
これが株式運用インカムゲインのリスクとなります。
それではリターンの水準はどうでしょうか?
先に述べた通り貸主より株主はありがたい存在ですが金利と配当の水準が同じであれば、確実性の高い債券投資に人は動くでしょう。
その解消のためには金利と比較し配当の水準を高くする必要があります。
結果として、通常両者を比較した場合、配当の利回りが高くなりますが、その分リスクも内抱しているという事になります。
<不動産>
不動産運用は単に土地を購入するだけでは収益は見込めません。
その土地を利用し賃貸する事で賃料が入り、この賃料が不動産運用のインカムゲインとなります。
加えて賃料は土地を駐車場の様に更地で貸すよりは、建物を建築して家賃として賃料を得た方が利回りが向上しますので、一般的には「土地+建物」の状態で運用が行われます。
そして利回りの水準は、同じ投資額に対し先の債券、株式と比較し、通常高い利回りが期待できます。
それは何故でしょうか?
不動産運用のリスクとの関わりがあります。
1つは外的要因の損害です。
地震・水災・落雷といった自然災害や火災・人為的破壊といった事故、経年劣化や耐用年数部材の修繕といった予見不能なコスト発生の可能性や最悪の場合消失が考えられます。
2つ目は立地環境の変化です。
不動産運用開始時、その時点の利便性などを考慮した立地環境から賃料が設定され利回りの目論見をたてますが、例えば時の経過で当時のメイン通りが裏通りに転落するといったような変化で評価が低下すれば、賃料設定を目論みより下げねば借手が見つからない事態も起こりかねません。
もしこの様な事態となれば、根本的に立地環境自体を元に戻す事は困難であり、受け身にならざるを得ません。
打つ手が無いという点で、先の2者よりもリスクの程度としては大きなものとみなされます。
それを負っての投資ですので、賃料は高利回りを期待するという事なのです。
⬜︎ キャピタルゲイン
資産を保有している間の利回りがインカムゲインであるならば、キャピタルゲインとは何でしょうか?
これは「譲渡益」という言い方が分かりやすいでしょう。
株式を例にしましょう。
株式運用には期限の定めが無いと申しました。
それでは、そろそろ運用を手仕舞いして投資した資金を手元に戻す時にはどうすれば良いでしょうか?
一番真っ先に考えられるのは第三者に自分の株式を買ってもらう方法です。
この時、自らが購入した株価よりも売却時の株価が高ければ「譲渡益」が発生しますし、安くなっていれば「譲渡損」となってしまいます。
これがキャピタルゲインです。
一般に取引される上場株式は日々刻一刻と値が上下いたします。
果たして将来的に株を手放す時の株価が読めるか・・・・?
キャピタルゲインで利益を上げるという事は「投機的」な要素が多分に有るといえるでしょう。
また、不動産投資は地価変動がない場合も、キャピタルゲインは基本的にマイナスになります。
理由は建物が償却資産であるからです。
建物は日々老朽化が伴い、その価値は日を追うごとに低下していきます。
不動産のキャピタルゲインで利益を上げるには、この償却割合を超える地価上昇が必要になります。
つまり、株価と比較しキャリタルゲインで利益を上げるハードルが高くなるということ。
因みに、債券運用には満期がありますので、期限を迎えれば元本回収が出来ます。
運用途中に第三者にこれを譲渡しない限りはキャピタルゲインはありません。
⬜︎ ライフプランの利用目的に合わせる
債券・株式・不動産の利回りについてまとめて参りました。
この様に利益を上げる仕組みは個々に異なり、それがリターンとリスクの度合いの違いとなって現れます。
運用期間を通してインカムゲインで成果をあげても、運用手仕舞いに失敗し、キャピタルゲインがマイナス益となり、全て帳消しにしてしまっては元も子もありません。
その様な事態を回避する為には、運用資金の活用時期が決まっている性質の準備金にはこうした運用法を避けた方が賢明でしょう。
例えば、子供の大学就学時の準備金として株式での運用を試みた場合、インカムでの配当益を充分に上げる事が出来たとしても、大学就学時点の株価動向によってはキヤピタルで損失を被る事態も考えられます。
その時期にピタッと株価をコントロールする事は叶いませんから・・・。
「単に株価が上がっているから良さそう」
「不動産投資は儲かるらしい」
ではなくそれぞれの運用方法の特性を見極め、ライフプランの運用目的に合った方法を選択したいですね。
パートナーズライフプランニングの「家計設計サポート」コンサルティングは皆さんのライフプランに欠かせない資産形成についても分かり易くご説明いたします。
是非ご活用ください。
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