自由設計VS規格型住宅 ハウスメーカー新築注文住宅間取りはどこまで自由?

マイホーム購入を新築一戸建てと決め、間取りやデザインをこだわった家づくりを目指すのであれば注文住宅での新築は憧れの存在ではないでしょうか。

どのハウスメーカーの住まいが良いかと比べるだけでワクワクしてきます。

でも各ハウスメーカーの注文住宅と一口に言っても、自由設計住宅と規格型住宅がある事をご存知でしたか?

注文住宅の新築とは言いながらも、自由設計住宅と規格型住宅ではその名称からすると、間取りがどこまで自由になるか差が有りそうな印象を受ける事でしょう。

更には間取りだけでなく外観、内装設備仕様における自由度の違いも気になる処です。

せっかくこだわりの注文住宅を目指したのに、どこまで自由に出来るかの差が原因で家づくりが中途半端になるのも嫌ですし、各ハウスメーカーの自由設計住宅と規格型住宅の対応によっては、ハウスメーカー選びにも影響するかもしれません。

自由設計住宅と規格型住宅の違いは何なのか?それぞれ間取りや企画はどこまで自由が効くのか?について予め知っておくに越した事はないでしょう。

只でさえ新築注文住宅の家づくりはやるべき事が盛りだくさんです。

目星を付けたハウスメーカーと打ち合わせを重ねたものの、間取りや企画が全然自由にならず、振り出しに戻って他のハウスメーカーと一から打ち合わせなどと言う話になっては負担になるだけです。

理想のマイホームを目指すには理解しておいた方が良さそうなテーマのひとつと言えるでしょう。

 

 

注文住宅の新築間取りはどこまで自由?

素敵な家の外観

自由設計住宅と規格型住宅の違いを比べる前に注文住宅とは何か?について整理しておきましょう。

実はこの注文住宅、ハッキリとした定義が決まっている訳ではありません。

何となく「注文住宅」と言う響きから間取りや企画に制限は無く、どこまでも自由が効く家づくりに適した新築住宅を連想するのではないでしょうか?

そこからすると注文住宅=自由設計であり、規格型住宅はそれに適さない位置付けにも思えてしまいそうです。

しかしながら、時にそのイメージと各ハウスメーカーの唱える注文住宅の扱いに食い違いが見られるケースも有るのです。

 

注文住宅での新築とは?

一般的に多くの方が持つ注文住宅のイメージは、前述の通りどこまでも自由が効く高いオーダーメイド性から、間取りはもちろん外観やインテリアデザイン、設備仕様もいちから作り上げる新築住宅の事を指すと捉えられるでしょう。

それに対しこんな解釈の仕方もあります。

新築一戸建てのマイホーム購入には、他に建売住宅という選択肢がありますね。

言うまでも無く建売住宅は土地と建物セットの完成した状態で販売される新築住宅ですから、間取りも仕様も既に確定していますのでこれが注文住宅に当たらない事は明白です。

一方で建売住宅以外の新築建物は基本的には間取りの選択は自由です。

一部の売り建て方式の建築条件付き土地販売で間取りの条件が課されている等特別な場合を除けば、建売住宅以外の住宅建築は間取りも仕様も企画は自由であり、その意味で建主の注文に応じて建築するこれら全てが注文住宅で有るとする解釈も成り立ちます

これを広義的な意味での注文住宅とするならば、前者は狭義的な注文住宅という言い方になるでしょう。

そうしますと、広義的、狭義的どちらの意味で注文住宅を扱うかによって、その位置付けはだいぶ変わってきます。

広義的に注文住宅を扱うならば間取りや仕様の自由度は基本的に問われませんが、狭義的であればどこまで自由に間取りを企画出来るかが重要な問題となります。

この様に注文住宅で新築すると言っても、検討対象のハウスメーカーがどちらのスタンスで注文住宅を捉えるか次第で、皆さんとの間に注文住宅の解釈にズレが生じる事も起きてしまうのです。

 

間取りはどこまで自由に作れるか?

解釈の違いだけで無く技術的な自由度の格差もハウスメーカー間に見られ、両者が相まった場合に新築マイホームを検討している方からこんな話が聞こえる事があります。

「注文住宅だと聞いていたからこのハウスメーカーに相談したのに、アレコレ間取りが自由に出来ない理由ばかり…」

注文住宅なのだからアイデア次第でどこまでも自由になると思っていたのに、そうはいかない不満の声です。

事実、ハウスメーカーごとの技術的自由度の差異は決して微小な範囲では治りません。

それでは注文住宅をどこまで自由に作れるかの技術的な違いは何が要因で生じるのでしょうか?

一般的には次の3つに起因すると考えられます。

 

工法・部材のチョイス

新築一戸建ての建築という点は共通していても、ハウスメーカー全てが同じ工法や建築部材を採用しているわけでは有りません。

企画の自由度は在来木造、ツーバイフォー、軽量鉄骨、鉄筋コンクリート造と工法的な違いや、建築部材のチョイス次第で影響を受けます。

例えば在来木造であれば、他の鉄骨造やコンクリート造との素材の違いによる特性の他、木材の樹種、集成材か一本物か、サイズによっても「柱無し空間の広さ」「開口部位置と最大スパン」といった要件が変わり間取りの自由度に影響します。

ハウスメーカーの部材のデリバリーが固定化されている場合、必然的にその設定状況により自由度を左右する要因となります。

 

②技術的キャパシティー

工法や部材が同じであっても、その使いこなしにも各ハウスメーカー間での格差が有ります。

各社が備えるいわゆる「設計マニュアル」に該当する技術的指針を基に、間取り図作成、企画立案を立てるのが一般的ですが、その設定水準は上記①が同等内容のハウスメーカーだからと言って必ずしも一致してはいません。

例えば建築設計技術一般として確立されている工法であっても、自社設計マニュアルで網羅していない場合、設計対応不可という硬直的な扱いをするハウスメーカーも見られます。

本来、安全を目的としてマニュアルを強化するのであればユーザーとしては歓迎すべき話なのですが、そうした目的とは異なり単に技術一般への知識不足や関心の希薄さが自社マニュアルでの設計対応可能範囲を狭めている社もあり(マニュアルに書いてないから出来ません!という扱い)、技術的キャパシティーの差異は自由度の違いとして現れる事があります。

 

③設計士のスキル

既に挙げた工法・部材・技術的な差異は設計上の自由度を大きく左右しますが、マンパワーもこれに影響を及ぼす要素となります。

①と②がいかに柔軟な注文住宅設計に適応していたとしても、最終的にどこまで自由度を発揮した間取りが作り出せるかは設計士のスキル次第です。

ある意味では注文住宅でどこまで間取りの満足度を高めるかはこの要素が一番のキーポイントになるとも言えるでしょう。

高いスキルを持つ設計士であればテクニカル面の制約をカバーするアイデアを示してくれる事もあるでしょうし、スキルに難があれば如何にテクニカル面で柔軟性の有るハウスメーカーの注文住宅であっても、中々理想の案にはたどり着けないものです。

 

自由設計の定義はハウスメーカーにより違う

さてここまでの話で、一口に注文住宅といっても必ずしもオーダーメイド性の高い住宅ばかりを指すものでは無いという事を確認しました。

それでは自由設計の家とはどの様なものを指すのでしょうか?

前述の通りイメージとしては自由設計=注文住宅と解されるのが一般的かもしれません。

しかしながら間取りの自由度の高さが注文住宅の必須要件でないとするならば自由設計はどんな位置付けになるのでしょう?

また、語彙から自由設計の対義語として印象付けられる規格型住宅とはどの様な住宅なのかをまとめてみましょう。

 

自由設計住宅

素敵なマイホームを実現する為に間取り、内装インテリア、設備、外観デザインの理想を叶えるにはオーダーメイド性の高い家が最適に思えます。

また「注文住宅」という名称の扱いの広さは前にも触れた通りですが、「自由設計」という名称は一般的呼称というよりは、ハウスメーカー側が商品のキャッチフレーズとしてわざわざ用いている事を考えますと、これこそ前述の狭義的注文住宅に適応するものという印象を受けるはずです。

「当社の建物間取りは自由設計です!」

とアナウンスされればなおさらです。

しかし、先程の注文住宅同様にハウスメーカーの自由設計の扱いにはかなりの幅が含まれているのです。

 

・技術的要素

まず技術的面での自由度水準に違いがあり、それは先程注文住宅での説明で挙げた① ② ③と同じ要因によるものです。

ひとつ加えるならば「モジュール」も着目すべきポイントです。

モジュールとは、家の設計をする場合全てをフリーハンドでは無く、基本単位となる「モジュール」を定めるのが一般的で、「尺モジュール」「メーターモジュール」がよく用いられます。

前者は約91㎝、後者は1mを基本単位とするのですが、設計基準上「モジュール寸法のみの間取り構成」「その1/2迄刻める」「1/4迄」「完全自由」とハウスメーカーごとに適用範囲は様々であり、対応可能寸法が細かければ細かい程柔軟に間取りが構成できますが、反対であれば大味な間取り構成になりがちです。

 

・セールス的要素

自由性の違いは技術的要素によるものだけではありません。

自由設計を謳い文句にしながらも間取りの外周、階段位置等は動かせず、室内の間仕切りのみが自由に決められる程度の住宅商品も自由設計の名称で取り扱われている事があります。

部屋の仕切りが自由に設定できるから自由設計という主張なのですが・・・。

ハウスメーカー側の立場では新築住宅は「自由性」をアピールした方がセールス的には得策ですのでこうした扱いが起きるのですが、このタイプは分類的には次に取り上げる規格型設計住宅の一種と考えた方が宜しいでしょう。

この様に自由設計の住まいと言えどもどこまで自由に間取りや企画が対応可能か、その水準には差異がある事も押さえておくべきでしょう。

 

規格型住宅

規格型設計の特徴は予め間取り図がハウスメーカー内にプラン集の様な形で作成されており、その間取りの中から選択して家づくりを進めていくというスタイルをとっている事です。

選択肢となるプランの数はハウスメーカーの住宅商品ごとにかなりの幅があり、数プランのみのケースもあれば、百プランを超える様なものも見られます。

いずれの場合もその中から土地の形状や自らの構想に近い間取りを選んでいくことになりますが、選択肢の中に見合った間取りが無い場合も当然出て参ります。

そうした場合の対応は「一切変更は出来ません」というハウスメーカーもあれば、「一定の基準内であれば変更可能」と、どこまで柔軟に対応可能かは様々です。

また、設定される規格は間取りだけでは無く設備や内装インテリア、外壁材や屋根形状にまで及ぶ事も多く、キッチンや洗面台はコレ、床材・壁紙はこの中から選ぶ、外観も…という具合に選択肢が限定されているケースが多い様です。

規格型住宅は、こうした点でせっかくのマイホーム計画をこだわりを持って新築しようと注文住宅を選択しても、間取りやデザインのアイデアを工夫する余地がタイトな為に十分に希望が反映出来ない可能性があり、この点がデミリットとなります。

 

自由設計VS規格型住宅どっちを選ぶ?

それでは注文住宅を新築する場合に自由設計と規格型住宅どっちを選ぶのがメリットがあるのかをまとめましょう。

 

自由度以外の違いとは

前項の説明からすると、自由設計はハウスメーカーごとの自由度の違いに注意を払う事が必要ですが、要件を満たすものであれば希望を叶える住まいには最適に思える反面、規格型住宅ではやはり色々な制約ごとが家づくりをどこまでも窮屈なものにしてしまいそうなのが心配です。

しかしながら、両者には自由度だけではなく多くの場合コスト面にも違いを設けられています。

単純に縛りを受けるだけならば規格型住宅を積極的に選択するメリットはありません。

何らかのプレミアムが必要でしょう。

それが価格面です。

間取り図始め、設計図面を作図するということは企画構想を練るだけでなく、構造計算、各部詳細のチェックとかなりの労力を要します。

オーダーメイド性が高ければ高いほどこの度合いが増します。

そこで予め間取り案を企画しておけば、都度のこうした作業が割愛出来るので省コスト化が計れます。

また、シンプルな間取り案をラインナップに揃える事でのコストパフォーマンス効果もこれに加われば企画型住宅独自の魅力を引き出すことが出来るというわけです。

 

自由設計の家と規格型住宅はこんな選び方も

こだわりを実現する為の自由性を優先するか?コスト的な魅力を採るか?

迷ってしまいましたか?

それではこんな選び方はいかがでしょうか。

まずどちらから検討を始めるかを考えましょう。

答えは規格型住宅です。

検討先のハウスメーカーに両者が備わっているのであれば、まずは規格型住宅商品に皆さん自身の構想に近いものが有るかどうかをチェックします。

この場合、ピタリと一致する間取りは中々無いはずですので、あくまでも近いもので構いません。

次に、前項でも触れた通り規格型住宅と言えども、ある程度の範囲で間取りや仕様を変更可能、一切変更不可という場合と、ハウスメーカー により対応が分かれます。

そこである程度の変更を許容している社の企画に手を加え、「セミオーダー」的に扱う事でどれだけ希望に寄せられるかを検討します。

もし、一定レベルで希望を満たせる水準になったとすれば、それは自由設計の家よりもコストが抑えられている可能性があります。

それならば無理に自由設計にこだわるよりも安価に希望のマイホームが実現出来る選択肢となり得ますね。

そうした案が無ければ、その時こそ自由設計で存分にアイデアを注ぎ素敵な案を練り上げれば良いのです。

 

ハウスメーカー選びでの注意点

外観立面図

最後に新築注文住宅を検討する上でままある失敗事例をご紹介します。

相談先のハウスメーカーから間取り図の提案を受け、予算的には近いものの間取りやデザインがまだ十分に意向を反映されているとは言えない懸念に対し営業マン氏が、

「契約後に間取りはいくらでも変更可能」

「おしゃれにする為の提案も契約後に専門のインテリアコーディネーターが行う」

と説明があり、それならと契約に至るケースでの話です。

 

契約後は説明通り希望を叶える為の打ち合わせ時間が設けられ、そこに偽りはありません。

しかしながら、どこまで打ち合わせを重ねども間取りはもどかしい程に代わり映えしない上に、インテリアや設備部材も選択できるバリエーションは限定的で一向に納得する案が見えてこない・・・。

コレよく耳にするお話ですが、原因のひとつとしてハウスメーカーから提案されていた間取り図が、実は自由設計では無く規格型住宅の商品であった場合にこうした事が起きてしまいます。

それにはこの様な背景があります。

ハウスメーカーの担当営業マンの視点で複数社競合状態であった場合、受注の確度を上げる為には価格を少しでも安く提示したいと考えます。

それには規格型住宅の提案を考えたいのですが、自由設計では無い点をネガティブに捉えられるのも心配です。

そこで、規格型である事を伏せて、さも自由設計の様なプレゼンテーションが契約前の提案間取りであったとしても、買い手は間取り図の外形だけで自由設計か規格型かを容易に見分ける事は出来ません。

これに気付くのが契約後になると、規格型の制約から抜け出せない。

ここから自由設計への商品変更は差額が発生し予算内には収まらない。

結果として行き詰まってしまうという失敗事例です。

案外このパターンは多いものです。

どちらのタイプの提案か確認しておく事でこの様な失敗は防げそうですね。

自由設計住宅と規格型住宅どちらが優れているというものでは無く、それぞれの特徴と皆さん自身の意向にあったものを選ぶ事が大切です。

今回はマイホーム計画を新築注文住宅で取り組む際、規格型住宅と自由設計の存在、その特徴と活用法を見てきました。ご自身の家づくりにあった住宅商品を選択し素敵なマイホームを実現したいですね。

この記事の監修<br>パートナーズライフプランニング<br>代表 栗山 琢磨

この記事の監修
パートナーズライフプランニング
代表 栗山 琢磨

仙台で生まれ育ち、大手ハウスメーカー・外資系生命保険会社勤務を通じて得た住宅・不動産・ライフプランの豊富な実務経験と専門資格のスキルをベースに2011年起業。

住宅コンサルタント・家計設計コンサルタントとして相談対応域は住宅ローン・土地探し・間取りづくり・ハウスメーカー選びといった住宅購入相談から学資や老後の資金準備・生命保険相談と皆様のライフプラン全域をカバー。

各テーマの仕組み・課題を解り易く解説。

仙台を中心に貴家の頼れるコンサルタントとしてお手伝いいたします。

・1級ファイナンシャルプランニング技能士
・トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)
・宅地建物取引士
・インテリアコーディネーター

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この記事の監修<br>パートナーズライフプランニング<br>代表 栗山 琢磨

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