新築注文住宅の家は皆個性的ですが、外壁を黒でコーディネートされた建物外観は、建主の家づくりへのこだわりが色濃く表現される、最近流行りのおしゃれな外観スタイルのひとつです。
せっかくのマイホームを新築注文住宅で家づくりするなら、誰もがこだわりをもっておしゃれな住まいを目指す気持ちを秘めているはずですが、そうした想いがストレートに表現されるのが外観デザインです。
なんといっても存在そのものが周囲にこだわりを主張し続けるのですから、マイホームをおしゃれに新築するには、ここを個性的にキメる事を考えたいですね。
そうした個性的なデザインを模索した時に、メインを黒い外壁としたカラーコーディネートの建物は、確固とした主張を醸し出す雰囲気に独特な魅力があります。
確かに黒い外壁でまとめた外観は、最近流行りの外観スタイルのひとつであり、新築した建物の間では度々目撃する機会があるものの、新築全体の総数からみればまだまだ主流という程の割合ではありません。
例えば同じ無彩色外壁でも白色でまとめた外観コーディネートと比べれば遥かに少数派。
そうした独自性も黒い外壁を用いた外観デザインの魅力のひとつとなっているようです。
更に外壁に黒色を採用するだけでは無く、サッシ、雨樋といった外部の付帯パーツも黒で統一する事で、一層こだわりを強く表現する傾向も強いようです。
しかしながら、必ずしも思惑通りに「黒でまとめたコーディネート」=「おしゃれな家」ばかりではありません。
家づくりで描いていた黒中心のおしゃれなイメージも、新築完成後の姿は想像とだいぶ違っていたという失敗談も耳にするところであります。
せっかくこだわりを注いだ新築のマイホームが、完成してみたらイマイチな出来栄えという話は残念でなりません。
今回はそんな失敗を回避し、黒い外壁でおしゃれな新築にキメる為にここを押さえれば失敗しないコツについてのお話です。
目次
黒い外壁の失敗例とは?
黒い外壁をベースとした建物外観のコーディネートは、先にも触れた通り全体に対する割合は限定的なものの、昨今急速に広まりをみせる外観デザイン手法のひとつです。
但し、確かに黒い外壁を中心に全体を黒に統一した外観スタイルは、強くこだわりの主張を感じるのですが「おしゃれな家」かと問うてみると、必ずしもそうとは言い切れない建物も散見される様に私には思えるのです。
勿論、世の中で新築されている建物全てがおしゃれな家ばかりでは無い様に、黒い外壁をまとっているからといって、それだけで全ておしゃれな家になるはずもなく、そこに差はありません。
そうでは無く、主観的ではありますが黒い外壁での外観コーディネートをしている建物が発する「おしゃれ」の主張とは裏腹に、寧ろ反対の印象に映る事例が多い様に感じるのです。
おしゃれに感じないとはどういう事か?
確かに外壁色の黒の配色自体は、周囲の建物色との対比から特異なインパクトを受けます。
しかしながら、外観デザインの全体評価として、黒い配色以外のセールスポイントとなるとどうでしょう?
他に特筆すべきポイントに乏しい外観デザインの建物が多い様に感じるのです。
色の主張が強いだけに、他の見せ場の不足感が対照的に目立ってしまう印象ともいえるでしょうか。
恐らく黒を基調としたデザインに失敗感を持った方々の共通ポイントもここではないかと推測します。
仮に黒い配色がインパクト大であったとしても、その要素のみでおしゃれ感の演出が難しい事は何も新築住宅に限った話ではありません。
車、衣服、雑貨といった身の回りにある全てのデザインは、おしゃれな配色に加えて素敵なシルエットやプロポーション、ディテールが備わってはじめてまとまりのある個性的デザインとして成り立つはずです。
おしゃれな家づくりを目指し新築のマイホームを黒配色で外観デザインしたものの、イメージと完成後の姿に物足りなさや明らかなギャップを感じる失敗談は、配色一辺倒のデザインコンセプトにその原因と対策の可能性を探る事が出来そうです。
黒い外壁の外観をおしゃれな家にするコツは?
それでは配色一辺倒ではない外観デザインを考える場合、どこに注意を払えば失敗しないのでしょうか?
黒い外壁を用いながらも、おしゃれな家に仕上げるコツはあるのでしょうか?
まずは、外壁の配色を除いた要素で外観デザインを考えてみましょう。
外観デザインをおしゃれに形づくるには、屋根、外壁ラインをメインとしたシルエットに、サッシ形状、バルコニー等の付帯品を加えながらプロポーションを整える流れが土台となります。
屋根の納まりにまとまりが無く、サッシ形状や配置も統一感が無い状態であるとすれば、もはや色の選択だけで事態は好転しません。
まずは「カタチ」をおしゃれにつくりあげる作業がスタートラインです。
勿論この段階で色のイメージが備わっていればそれに越した事はないのですが、順序としてはカタチに配色が続きます。
さて、形や色の描写が続きましたが、言葉からイメージを広げていくのは中々難しいものです。
そこで一例示した上で、それを題材に検証してみましょう。
黒の外壁を基調とした外観デザインの建物ですが、ここに前述したおしゃれな外観デザインのコツを盛り込んでみました。
皆さんの好みに合っているでしょうか?
ここからはこの外観イメージを題材に、おしゃれな黒外壁デザインについて更に深掘りしてみたいと思います。
おしゃれなカタチをつくろう
建物の外観図面から一切の装飾を除いた、基礎、壁、バルコニー、庇、サッシ、屋根といった外装基本部材の構成を、それら相互の釣り合いである「バランス」と、パーツ間の数量的配列や比率の「プロポーション」を意識しながらカタチを整えていくところから、外観デザインの企画は始まります。
バランスで馴染みの深い技法といえばシンメトリー(左右対称)があげられます。
またプロポーションは黄金比(縦横 約5:8の比率)が代表格です。
こうした概念を用いながら先の基本部材を構成しデザインをおしゃれに形成していくのですが、特に「サッシ」と「屋根」の置き方で外観の印象は大きく左右されます。
<サッシのバランス>
一口にサッシといってもバリエーションは実に豊かです。
機能的な分類では、引き違い、縦滑り、横滑り、Fix、内倒し等々
機能面は勿論、デザイン的にもそれぞれ固有の特徴をもっています。
高さ・幅の寸法のチョイスも含めればプランニングにおける選択肢は更に広がります。
しかしながら、広い選択肢という事は選び方も問われるという事を意味します。
サッシは本来の機能である採光や通風をコントロールする機能面にとどまらず、内外観デザインを左右する重要なアイテムでもあります。
単体では平面でしかない外壁面に、様々な表情の変化をもたらす役割を担う中心アイテムがサッシといえるでしょう。
サッシ相互の種類、寸法のバランスや外壁面に対するプロポーションを考慮して選択する事は勿論ですが、壁面への配置いかんでも表情は大きく姿を変える事があります。
上下左右の調和を図りながらリズムよく配置し、外観デザインの表情を作り上げていきます。
上の図であれば建物右奥の上下に重なるサッシ部分がこの建物の「顔」になる部分ですね。
おしゃれな外観デザインは、外壁色で個性を強調する前に、まずはここを整える事が第一歩と言えるでしょう。
<屋根形状>
冒頭にも触れました、今一歩おしゃれなルックスに成り切れていない黒外壁コーディネートの建物の要因を探ると、多くの場合間取りとデザインの企画手順に課題を抱えているように見受けられます。
設計企画において、間取りの起案を優先し、それを済ませた後にデザインの考察に入るといった様に、間取りとデザインの企画立案を別個のものとして分離した作業スタイルの設計士は少なくありません。
しかしながら、この手順を辿ると間取りの出来具合は満足なのに、内装や外観のデザイン性が不十分な企画に行き着く可能性は排除できないでしょう。
まとめた案は建物シルエットのプローポーションも陳腐で前述したサッシ相互のバランスもイマイチ、でも間取り自体は問題無くデザインを整える為の修正の余地は残って無い‥‥、でもおしゃれな家を建主が希望している。
失敗談でありがちなお話です。
そこに陥ってしまった時にどうするか?
それなら「独自性で勝負」と解決の道を模索した結果が、黒い外壁と片流れの屋根形状になるケースは少なくない様です。
黒い外壁、片流れの屋根、どちらも数の上では決して主流派とはいえません。
希少性=個性的との評価で「カタチ」のおしゃれ感不足を挽回しようという狙いです。
しかしながら、黒い壁同様に片流れの屋根形状も特異性はあったとしても、それ単体ではデザインの決め手にはなりません。
特に昨今の片流れ屋根によく見られる様なモダンタイプを意識した軒を切り詰めたスタイルの場合、先に説明した壁面全体のプロポーションやサッシバランスも伴わないと、かえって変化に乏しく、想いとは裏腹なデザインに落ち着いてしまう事には要注意です。
先の外観例は、これとは反対にオーソドックスな寄棟屋根を用いながらも、軒の深さと外壁のダーク配色で建物の奥深さを演出しようという設計意図です。
屋根は外観デザインを大きく左右します。
まずは間取りをベースにまとめ上げた壁面構成に、どういった屋根伏せがおしゃれなシルエットを描けるかを柔軟に考えてみたいですね。
<配色>
外観デザインを最後にキメるのは色づかいです。
前に取り上げた要素をおざなりにしておしゃれなデザインは成り立ちませんが、それらの工夫が備わったならば配色次第でも建物の表情は大きく変化します。
今回主題としている黒の外壁をメインとした配色で多くみられるのは、先にも触れた通りサッシ、軒周り、庇といった外装パーツを全て黒に統一したデザインが目立つようです。
過去にはこれらのパーツを外壁色の明度と反対色に設定し、明るい外壁には黒や茶といったダーク色の付帯パーツ、濃色の外壁には白の様な明るい付帯パーツとしアクセントをつけた配色が主流でしたが、近年は寧ろこれらのパーツを外壁色に同化させる様なカラーコーディネートが多くみられ、黒の統一もこの流れを汲んだものといえるでしょう。
これは勿論有効なおしゃれ技法なのですが、全体を黒でまとめた場合、サッシのガラス面も反射の具合で黒枠のサッシ色に溶け込む事が多く、建物全体がメリハリ無く、乏しい表情の暗い印象のみに落ち着いてしまう事があります。
これだとおしゃれなデザイン的にはもう一工夫欲しいところです。
変化をつけてみたらどうでしょうか。
例えばツートンカラーです。
但し新築の住まいでよく見かける様な外壁の2色張り分けでは、黒の外壁を好む個性派、こだわり派の方々には物足りないかもしれません。
そこでツートンカラーの部位を外壁間では無く他に求めてみるのです。
上の外観図では壁と屋根をそれぞれ黒と白のツートンカラーに施してみました。
屋根材自体の色は白という訳にはいきませんが、一般的な住宅立地でビューポイントから建物を見上げた場合は低い位置からの視線となる為、実際可視化できる屋根パーツは軒樋、軒先、軒裏といった付帯部分になります。
この部分でツートンカラーを構成するのです。
特に寄棟屋根は軒の深さが強調される屋根形状です。
黒外壁の存在感は維持しながらも、更に個性を発揮できるのではないでしょうか。
自由な発想でおしゃれな家づくり
ここまで黒い外壁でおしゃれな新築にキメるコツについて整理してきました。
いつの時代でも同じですが、その時々の流行りのスタイルというものがあります。
黒い外壁デザインも、今を代表する外観デザインのひとつといって良いでしょう。
流行りのスタイルというものはその時代の感性にマッチしているから人々の関心を集めるのであって、そうしたものに着目するのは自然な流れであり、新築注文住宅の家づくりにおいても変わりありません。
但し、注文住宅でそうしたアイデアを採用するには、それを活かす「企画」次第でクオリティーが左右されるのはオーダーメイドの宿命です。
その企画作業の手順に今回解説した様な不備がみられると、思わぬ失敗を招いてしまうのです。
外観デザインの難しさは、間取り、形、色というそれぞれの要素をバランス良く融合させねばならない点にあります。
いくらデザインが良くても暮らしにくい間取りでは失敗作となってしまいますし、逆もまたしかり。
特に外観のカラーコーディネートのみでデザイン形成する事は難しいのはここまでお話ししてきた通りです。
感性にピピッときたスタイルは活かしながらも、丸写しでは無く自由な発想でそのテイストの美味しい部分だけを取り込む。
そんなイズムで家づくりに臨めばあなたらしいおしゃれで個性的なマイホームが実現するのではないでしょうか。
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