仙台の住宅コンサルタント、パートナーズライフプランニング です。
今年の仙台は寒い冬に感じますが皆さんの街は如何ですか?
マイホームを購入し暖かい暮らしへの憧れを感じる季節かもしれません。
そうなると新築一戸建ての家づくりを考えるにあたり、建築する建物の断熱仕様を重視して計画を練らないと希望通りの暖かい家は実現しないのではないか?と各ハウスメーカーの断熱性能チェックに熱心に取り組んでいる方もいる事でしょう。
実際、こうしたニーズに呼応する様にハウスメーカー側にも「断熱性能自慢」を熱心にアピール材料としている会社が見受けられます。
例えば仙台周辺の市場であれば「北海道仕様」といったインパクトのある謳い文句が添えられると確かに相当に暖かいのだろうなと感じてしまいますね。
勿論、抽象的なフレーズだけでは無く具体的な断熱性の性能表示をもってこれらのアピールがなされる事もあります。
ここで用いられる一般的なものが「UA値」です。
このテーマに関心のある方は一度は耳にした事があるのではないでしょうか。
それではUA値とはどの様な数値なのかご存知ですか?
UA値とは正式には外皮平均熱貫流率といい、1軒の家の室内から室外に逃げる熱量を建物表面積(外皮)で平均した値を指し、室内から室外に逃げた熱量を建物表面積で割る事で計算致します。
つまり数値が小さい程、断熱性能の良い住宅であると言う事です。
また、これの基準となる数値が国から次世代省エネ基準として示されております。
但し、日本全国でみれば気候風土には相当の開きがあるので、例えば九州と北海道の住宅に求められる断熱性能が同一では当然具合の悪いものになってしまいます。
そこで全国を気象環境に照らし8地域に区分し、寒冷な地域から順に1地域、2地域と区分しそれぞれの地域ごとにUA値の基準値を設けています。
因みに一番厳しい1地域に属する北海道北部は0.46で、仙台は5地域0.87、東京都心は6地域0.87と言う値になっており、これらの数値を下回れば基準を満たしていると言う事になります。
自分自身の建築する地域がどの地域に属し、そこに定められたUA値を満たした建物になっているかを建築業者は説明する義務を負っていますので、少なくともその段階で建築しようとしている地域の基準と建物の水準の関係が確認出来ます。
また、当然の事ながら断熱性能自慢のハウスメーカーは説明義務以前に積極的に自社建物のUA値をアピールする事に余念がありません。
「当社のUA値は業界トップクラスの数値になっています!」
といった具合にUA値を誇示し優位性を強調します。
ただ単に「当社の建物はものすごく暖かいです」と、言葉だけのセールストークよりは具体的な数値を伴う説明の方が説得力を帯びますね。
この様に単に「暖かい」と言う抽象的な説明に終始する事無く、そのスペックを客観的な数値で示してくれる事自体は歓迎すべきものなのですが、それが過度になると困った事態も・・・
同様な立ち位置のハウスメーカー同士がいわば「UA値自慢大会」を展開してしまうのです。
そうした流れの中に巻き込まれると、どうしてもUA値のスペック比較にのみ関心が集まります。
でもそこは要注意!
いたずらに断熱性能のみを最優先した結果、それと引き替えに他の要素が犠牲となってしまい、トータルバランスを欠いた住まいとなってしまっては本当に満足の行く家づくりからかけ離れてしまいかもしれません。
他の要素が犠牲?トータルバランスを欠く?とはどういう事か。
ここで特に注意を払いたいのが開口部、つまりは窓の扱いです。
⬜︎ 何故窓に注意が必要か?
通常、住宅の断熱性能を高める場合、床壁天井開口各部の熱伝導を抑える工夫を施します。
これを数値化したものが熱貫流率であり、各部材の素材特性や厚さで熱の伝わり方を低減させます。
そうした場合、家全体の中で一番ウィークポイントになるのが開口部、要するに窓です。
従来、窓の多くはアルミサッシが用いられてきましたが、何せ一般的に壁や天井に充填されている断熱材素材と比較し、窓の主要素材であるガラスの熱伝導率は約20倍程度、アルミ部分に関してはなんと約5000倍程にもなります。
いくら断熱材を吟味し、ぶ厚く家全体を包んだとしても開口部に対策を施さないままでは熱がどんどん逃げてしまいます。
そこでガラス部分を2枚にしたペアガラスや、3枚にしたトリプルガラスを採用したり、サッシ枠にもアルミより熱伝導し難い樹脂を複合させたアルプラサッシや枠全てを樹脂化した樹脂サッシといったものが登場し、この弱点を補う試みがなされているわけです。
これにより、かつては一般的だったアルミサッシの単板ガラスのものと樹脂トリプルサッシを比較すると、熱の損失量は凡そ7分の1位まで低減するレベルにまで性能が向上します。
その様に進化してきた開口部断熱の工夫ですが、スペックが向上してきたとは言うものの床壁天井の様に断熱材が充填されている部分と比較すれば、これでもまだ熱損失は開口部の方が大きくここが弱点であることに変わりありません。
ということは極端な例えですが、窓の全く無い家であれば、その他の床壁天井が同じ断熱仕様の家と比較しはるかに高断熱の住宅を実現することが可能と言い換える事も出来ます。
でも、いかがでしょうか?
いくら暖かい家であったとしても窓ひとつ無い部屋での暮らし・・・・
これでは暖かい家と引き替えに犠牲になるものが大き過ぎますね。
確かにこれは余りに極端な例えでしたが、窓が小さければ小さい程家全体の断熱性能、即ちUA値が向上するのは事実です。
実はここに注意が必要なのです。
先にも触れました通り高断熱をセールスポイントにするハウスメーカーはUA値の優位性を前面に押し出して自社商品をアピールしようとします。
それには本来であれば床壁天井開口住宅各部の熱損失を抑える仕様を備えるのが本則です。
しかしながらUA値アピールがヒートアップし「なんとかして他社よりも優位な数値をアピールしたい!」という意識が過度になると、UA値の数値を下げる(性能向上)事自体を「目的化」した様な家づくりがなされてしまう懸念が生じるのです。
⬜︎ UA値向上が目的化されると?
本来、住宅の機能を断熱性能のみで評価する事は相応しくありません。
間取りの使い勝手は勿論、採光性、通風性、意匠性と住まいの機能を左右するポイントは多岐に渡り、これらをバランス良くまとめ上げた企画が、住み良い住まいの評価につながる事は言うまでも有りません。
しかし、UA値スペック向上が目的化されてしまうと、こうしたバランスを図る為の工夫の必要性よりも、それらを犠牲にしてでもUA値向上に直結する策があればそちらを積極的に採用する事に関心が向かいます。
ここで特にその対象となりやすいのが開口部。
そもそもサッシをアルミペアからアルプラへ、更には樹脂ペア、樹脂トリプルとスペックアップする事で弱点となる開口部からの熱損失を抑える事が可能ですが、更にガラスを4枚、5枚となれば重量やサイズが収まりきれず一般市販の部材での性能向上はこの辺りが上限となります。
後は床壁天井の断熱化をどこまで引き上げるかの勝負という事になりますが、当然コストも上昇し逆に販売の阻害要因にもなりかねません。
では、何かもっと簡単にUA値を向上させる方法は無いか?と考えた時に有る方法が浮上します。
開口部の抑制です。
窓を無くすとまではいかないものの、採光等の法制限を満たす最小限の大きさに抑え、数も減らしてしまう事。
そうすれば窓を少なく小さくした分だけUA値は好転します。
また、この方法はコストダウンにも直結。
窓の数を減らし、サイズを小さくし、本来開口部のロスを補う他の部位の断熱施工を割愛出来るのですから当然コストも抑えられ、低コストで高断熱の住まいが実現可能とも言えます。
しかし・・・・・
窓を小さくする、数を減らすと言う事は過度にこれを推進すれば、本来求められる窓の機能に支障を及ぼす領域にまで達してしまう懸念が生じます。
窓面積や数が最小限という事は、本来なら窓の機能として求められる採光や自然通風といった暮らしの快適さに関わる機能面が抑制され、開放感といった様な意匠的な面でも当然制約になるという事。
暖かさ以外の暮らしの質に影響を及ぼします。
もちろん暖かい家の為なら「ちょっと暗めで、風通しも悪く、閉塞感のある室内」であっても「照明付けて、エアコンと機械換気動かして、夜はどうせカーテン閉めるから同じ」と割り切れるのであれば、こうした方法論も議論の余地があるのでしょうが如何なものでしょう・・・・
いずれにしましても、皆さん自身がハウスメーカーから提案を受けている企画案を断熱性能値のみに偏った視点で評価するという事は、バランスを欠いた住まいの発見を逃してしまう不利益の遠因となるかもしれない事は心得ておいた方が良さそうです。
断熱値の確認だけでは無く間取り図も注意深く読み取り、
提案された案が両者の機能性を満たした案なのか?
はたまた何かを犠牲にした上で成り立つ案なのか?
そしてそれはどの程度の影響を及ぼすのか?
「高断熱住宅」の議論に建主、業者共に熱中し過ぎて断熱議論に終始し、こうした視点が見落とされてしまわないよう是非とも冷静な検討を試みたいものですね。
とは言いながらも間取り図を正確に読み取り、今回取り上げたような住まいのバランスを評価する事に少々不安を感じる方もいる事でしょう。
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