仙台の住宅コンサルタント、パートナーズライフプランニングです。
前回に続き住宅購入の際、土地探しを含めたマイホーム計画の方へ地価相場ご相談のお話です。
今回は仙台近郊の具体的数字を上げて解説いたします。
仙台に土地勘の無い方には分かりづらいですがお許しください。
さて、前回のお話を簡単におさらいしますと、住宅購入の為の土地探しを始めると相談窓口とした不動産会社やハウスメーカーの営業マンから「土地の価格が上昇しているので急いで土地探しを進めたほうが良い」という様な話がよく聞こえてきます。
仙台であれば「震災以降地価が上がり続けている」といったフレーズが定番といえるでしょう。
また相談相手によっては既に地価上昇はピークを超えて下落傾向などという真逆な話も別方向から耳に入ってくるかもしれません。
いずれにしても、根拠のある話であれば住宅購入のタイミングや具体的な物件選択時の判断材料として貴重な情報にも成り得ますが、単に発した当人の思い込み情報であればそれを判断に用いては混乱や失敗を誘発する原因にもなりかねません。
そこで「どの様にして適正な現時点の地価相場やその推移を知るか」といった場合に、一般に市場に流通している物件の観察だけでは正確性を欠く事から、公的な地価指標である「公示価格」を活用する事が相応しい、というのが前回のまとめです。
前回はこちら→土地探し前に知りたい地価変動 ① 今は上昇中?
そこで今回は具体的に仙台市内公示価格の平成以降の推移を見てみましょう。
⬜︎ 仙台の地価変動履歴の調べ方
一口に地価を観察と申しましても土地の立地環境は様々です。
偏りが無い様に異なる条件下で何点か比較してみるのが良いでしょう。
また、平成からの推移の最中に周辺環境が急激に変化した場所も除外します。例えば仙台市地下鉄東西線開通による荒井地区や八木山地区です。
この様な地点は周辺の土地評価がこれを機に上昇するのは当然で、時間による相場の変化を観察するには相応しく無いからです。
そこで仙台市内予め定められている公示価格調査地点から商業地・住宅地を織り交ぜ、市内各区から1ポイントずつピックアップしてみました。
- 商業地市街地中心部: 青葉区中央1–10–1
- 商業地副都心部 : 太白区長町1–3–32
- 住居商業混在部 : 宮城野区栄1–4–22
- 住居商業混在部 : 若林区沖野1–30–1
- 郊外住宅地 : 泉区寺岡1–18–26
⬜︎ 仙台の公示価格偏差
① 仙台市青葉区中央
商業地代表は宮城県の超1等地、仙台駅前青葉区中央です。
早速右のグラフをご覧ください。
数値は調査地の1㎡あたりの地価です。
随分とうねってますね。
最も高値が91年の1350万円、
底値が2005年の171万円です。
仙台駅前の1等地とはいえピーク時の1㎡あたり1350万円はバブル期の凄まじさを彷彿させます。
バブル後の落ち込みも激しく高値に対し底値はなんと12.6%。
不動産相場の時間軸での偏差をまじまじと思い知らされる様です。
② 太白区長町
もう一つ商業地は仙台の副都心とも言える太白区長町です。
JR駅も程近く、仙台市地下鉄駅も備えた立地環境です。
高値は91年の65.3万円、
底値が2013年の13.8万円です。
仙台駅前には及ばずともピーク時の65.3万円は凄いです。
高値対する底値は21.1%とこちらも激しい落ち込みです。
バブル崩壊後断続的下落は震災後まで続いていた様です。
ピーク時の約2割という事は、単純に高値で5000万円の土地が底では1000万円の値になってしまうという事ですから、驚きですね。
③ 宮城野区栄
宮城野区栄は調査地の分類上は住宅地の扱いですが、
JR仙石線中野栄駅前、且つ国道45号線沿線である事から、
商業・住宅の混在地域としての扱いが妥当でしょう。
高値は91年の12万円、
底値が2010・11年の6.13万円です。
高値対する底値51%と前者2地点よりは落ち着いています。
しかし、こちらもバブル後の余波は20年間も続いています。
④ 若林区沖野
若林区沖野も分類上住宅地ですが付近には商業店舗が立地し、
4号線バイパスも近く商業・住宅の混在地域として扱います。
高値は91年の11.6万円、
底値が2011年の6.98万円です。
高値対する底値60.1%と栄より更に落差は落ち着いてます、
また、断続的下落が震災の時期まで続いたという点も同様です。
⑤ 泉区寺岡
最後に住宅地代表で泉区寺岡を見てみましょう。
仙台市北部の閑静な住宅街泉パークタウンの一角です。
高値は91年の11.7万円、
底値が2011・12年の6.12万円です。
高値対する底値は52.3%と前2地点と概ね同程度であり、
断続的下落の傾向も同様と言えるでしょう。
そして全地点を重ねたものが右図です。
各点の最高値を100とした指数で偏差率を表しています。
青葉区中央、太白区長町の価格偏差が際立ってますが、
商業用地は投機的な土地売買も活発な為、世の金融経済の影響
を被り易く、この様な偏差が生まれるのでしょう。
とは申しましても住宅地を含めた全体としても価格の変動幅は、
決して小さいものとは言えません。
「あの時はああだから高かったのだ、こうだから下がったのだ」
という事後の後講釈を耳にする事もあります。
しかし、そもそも不動産相場はこの様な偏差が起こり得るものだという事は結果としての事実です。
「最近上がっている」「下がっている」という近視眼的に現時点の「相場」を盲信する事なくこの様な事実も頭の片隅に置きながら冷静な判断で臨まれる余裕を持ちたいところです。
⬜︎ 近年の相場変動
しかしながら、相談先の営業マン氏らが口を揃えて「上がってる」と連呼されればついつい焦りも感じてしまいそうです。
事実、上のグラフからも近年の地価上昇の傾向は見て取れます。
それでは、直近10年間の動きはどうなっているでしょうか?
いわゆる震災後需要とその余波で高値傾向と言われる期間です。
2011年を100としてその後の偏差具合を比較します。
全地点を1つのグラフにまとめたのが右図です。
ここでも特徴的なのは商業地の2点と他ポイントの傾向の違い。
巷で「地価上昇」の声が飛び交い始めた時期もまだ下落傾向。
但し底を打ってからの上昇勢いは他の3地点を圧倒しています。
2011年を軸にすればその後10年間の偏差は、
青葉区中央174%、太白区長町153%の各上昇率ですが、
双方底となった2013年を軸にすると
青葉区中央195%、太白区長町166%となり1年あたりの平均上昇率は前年比で
青葉区中央13.5%、太白区長町9.4%上昇し続け、昨年時点で尚も持続しているという事になります。
次に過去30年で高値/底値の偏差に大きな差が見られなかった他の3地点を見てみると、直近10年間では泉区寺岡140%、宮城野区栄129%、若林区沖野119%とある程度の格差が見て取れますが、商業地とは異なり2011年から持続的に上がり続けています。
この間の平均上昇率は前年比で
泉区寺岡4%、宮城野区栄2.9%、若林区沖野1.9%となっております。
また、この3地点の地価推移がそれ以前の断続的な下落傾向が2011年に底を打ち、上記の様な上昇に転じた事からしますと、不動産会社、ハウスメーカー営業マンへの相談話で度々登場する「土地の価格が上がり続けている」という話は確かに実体を伴っていると言えるでしょう。
⬜︎ 土地探しでの活用法
しかしながら程度の問題があります。
例えば後者にあげた住宅地系3地点いづれかの付近で営業マンから土地情報を勧められた時に、相場的に2000万円位が妥当と思われるのに対しその物件価格が2600万円だったとします。
「そんなに高いの?」という問いに対する営業マンの答えは
「今、仙台市内はどこも凄く上がっているのです」
「早めに押さえてしまった方が無難ですよ!」
なんていうやり取りはよく見かける光景ですが、2000万円妥当と思われる物件価格が2600万円という事は30%も割高という事。
これが妥当な値か否かはここまでご覧いただいてきた手順で考察すれば概ねつくのではないでしょうか。
勿論、実際に皆さんの土地探しで公示地価を参考にする場合は、今回分類した商業地・住宅地による傾向の違いだけではなく地域ごとの特性がありますので、対象地に合わせた調べが必要な点と公示価格は実取引価格では無くあくまでも理論値である事を大前提にしながら扱う様にしましょう。
この様な時期の不動産市場にはオーバーシュートした価格の物件に遭遇する事は十分有り得ます。
如何にして根拠のある手掛かりを軸にして土地探しを進めていくかが成功のカギになるはずです。
パートナーズライフプランニングの「マイホーム購入サポート」コンサルティングは皆さんの手堅い土地探しをお手伝いいたします。
勿論、土地探しだけで無く住宅ローン含めた住宅資金計画、間取りづくり、ハウスメーカー選びと家づくりをトータルサポートする相談窓口です。
コンサルの記事はこちら→新築時の失敗や後悔を避けるには? 住宅コンサルタントの活用法
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*データの出典:国土交通省 標準地基準地検索システム
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