仙台の住宅コンサルタント、パートナーズライフプランニング です。
土地探しに取り組んでいる皆さんは、どんな所に新築し住まいを構えるのが良いのか迷っている方もいるでしょう。
仙台であれば仙台市中心部からのアクセスが良い鉄道駅周辺の人気が比較的高いようです。
利便性に注目が集まっての事でしょう。
但し住まいの為の土地探しという事は住環境にも目を向けねばなりません。
その観点では、こうしたエリアは家同士の間隔も接近しタイトな雰囲気にも感じます。
マンションや商業テナントが目立つのも住環境を考えると気掛かりな要素かもしれません。
一方で郊外の住宅地は、これとは反対に周囲の土地も建物もゆったりと構えている印象。
間取りや庭もゆとりを感じ、高層のマンションもあまり見かけません。
さて、それではどうしてこの様なエリアによる傾向の違いが見えてくるのでしょうか?
「駅周辺は利便性が高いから商業テナントやマンションが建つのでは?」
「それだけじゃ無く土地の値段が高く、小さな土地しか買えないからでは?」
確かにこれらの見立ては一因として間違っていませんが、もっと根本的な理由があります。
建築法規です。
建物を建てるのには、各自が思い思いに自由なものを建てられる訳ではない事はご存知でしょう。
建物建築に関わる様々な法規制が有り、これに適合したものでなければなりません。
それら法規の中でも、新築に向けた土地探しにおいて特に注視すべきが「都市計画法」です。
予め区域を定め、都市の健全性と秩序を守る目的で、定めた域内に建築する建物を規制する法律が都市計画法です。
その都市計画法の中に「用途地域」という区域の指定があり、これが土地探しにおいてとても重要です。
「用途地域」とは何でしょうか?
計画的に市街地を形成するために制定された地域であり、13の地域区分により域内の建物用途を制限するものです。
一般住宅用宅地として流通している売地物件の中で、最も厳しい制限が掛けられ主に郊外住宅地が該当する「第一種低層住居専用地域」と、全13区分の中では比較的緩やかで鉄道沿線に多い「第一種住居専用地域」を例に、これら区域間の制限の違いを比べてみましよう。
⬜︎ 建物の用途
ここまで一般住宅建築を前提として話を進めてきましたが、世の中の建築物は必ずしも一戸建ての住宅ばかりとは限りません。
同じ住宅でもアパートもあればマンションも含まれます。住宅以外でも商業ビル、病院、倉庫、工場と建築物の用途は実に多様です。
こうした全く異なる用途の建物同士が何の制約も無く建ち並ぶ事となればどうでしょう?
一般住宅の隣にはマンションが建ち、向かい側にはコンビニ、更に隣には自動車修理工場が建ち並ぶ・・・
そのような環境を許容出来る方もいるでしょうが、そうした方ばかりでは無いはずです。
一方で、住環境的には敬遠されるような用途の建物を建築する側の立場から見れば、住民からいちいち目くじらを立てられるのも不自由です。
こうしたお互いの利害衝突を避ける為に、用途地域では類似した建物の用途ごとに区域を定め秩序ある市街地形成が図られています。
「第一種低層住居専用地域」は住宅の良好な居住環境を維持できる用途を前提としており、専用の店舗・事務所や遊戯施設、工場といった建物は建築出来ません。
要するに周辺がこの区域内であれば近隣に住環境上好ましく無い建物は建築されにくい地域ということになります。
それに対し「第一種住居専用地域」は住居と商業の混在地域といった位置付けであり、店舗・事務所のへの規制は緩やかですが、一部の遊戯施設や工場には規制が掛けられております。
近所に商業店舗が建築可能という事はお買い物などの利便性の点ではプラス材料ですが、すぐ隣地にこうした建物が建つ可能性もあり、これをマイナスと捉えるならばプラスマイナス両面の可能性が含まれたエリアという言い方もできるでしょう。
すなわち2つの用途地域を比較した場合、土地探しの場面では「第一種低層住居専用地域」は近隣に建つ建物の用途に関し、あまり神経質になる必要はありませんが、「第一種住居専用地域」の場合にはある程度こうした建物が将来的に建築される懸念も念頭に置きながら検討する必要があるのではないでしょうか。
因みに「第一種」「第二種」との区分がある場合は「第一種」の方が規制は強化されております。
⬜︎ 建ぺい率・容積率
住環境を考えた場合、隣地建物の用途だけでは無くどんな大きさの建物が建つかによっても影響の受け方が変わります。
余りにも敷地に目一杯の大きさで建物が建てられては、相当な圧迫感を感じる事もあるでしょう。
逆に商業地域の様な場所で過剰に制限を加えれば土地の効率的な利用の妨げとなってしまいます。
そこで、「建ぺい率」「容積率」という基準を設け各用途地域に割り当てています。
建ぺい率とは建築面積(建物を真上から見た面積)の敷地面積に対する割合、容積率とは延べ床面積の敷地面積に対する割合であり画一的な数字ではありませんが、「第一種低層住居専用地域」ではそれぞれ40%/60%もしくは50%/80%、「第一種住居専用地域」では60%/200%といった数値が多く見られます。
ここでも両者を比較すると「第一種低層住居専用地域」の方が厳しい制限となるのが一般的です。
したがって同じ土地面積であったとしても、こちらの区域に該当していた場合は床面積に制約がかかり希望する間取りが実現出来ない可能性も考えられますので、土地選びの際には土地面積に注意が必要です。
⬜︎ 高さ、離れの制限
隣地建物の存在は、面積に加え接近の具合や高さといったものも気になるところはないでしょうか。
日照の確保や、圧迫感といったものに直接関わるものはむしろこれらです。
そこで用途地域で定められた区域内にこれらの対策として課せられる規制に、隣地境界と建物までの距離を定めた「壁面後退」や、建物高の上限を定めた「絶対高さ制限」、北側隣地への日照確保の為に「斜線制限」「高度地区」といったものがあります。
当然これらも住居色の強い区域ほど規制が強化され、「第一種低層住居専用地域」では実質的には3階建ての建築が難しく、2階建てであっても敷地北側から一定の離れを確保した配置でなければなりません。
時に間取りを考える際には、先程の建ぺい率、容積率同様に頭を悩ませる制約事にもなりえる反面、周囲の建物も同様の条件で建築しますので互いの権益が保たれた環境でもあります。
一方で「第一種住居専用地域」は比較的法規は緩やかで3階建ても条件をクリアすれば建築可能ですし、敷地北側の離れもかなり寄せた配置が可能です。
その点では「第一種低層住居専用地域」に比べるとプランニング上の取り組みはしやすいのですが、これは隣接土地も同じことが言え、自分自身にとって好ましく無い建物が建築される可能性も有り得ることを忘れてはいけません。
⬜︎ 都市計画図チェックを忘れずに
今回は用途地域の大枠としての特徴を整理してみました。
土地探し、間取りづくりに大きく関わる法規ですので、建築しようとする土地、購入しようとしている土地物件がどの用途地域に属しているのか、まずは確認したいところです。
主だった市町村のホームページには都市計画図が掲載されておりますので、まずはチェックしてみてはいかがでしょうか。