高い坪単価や価格だけでは無い|狭小土地購入の注意点

この記事のポイント
狭小土地の購入で注意すべきポイントは?
⚪︎ どうして狭い土地物件が増えた?
⚪︎ 土地が小さくなると坪単価が高くなるワケ
⚪︎ 小さい土地で注意すべき3ポイント
⚪︎ 表面スペックに惑わせれ後悔しない為には?

 

土地購入に向け売地探しをしていると、あまりに高い土地価格や坪単価に思わずため息が…

オマケにお値段は高い土地なのに広さは小さな狭小地。

家を建てるには、まず土地を買わねばならないものの、高くて小さくてとネガティブワードのダブルパンチ。

「こんなに小さな土地に希望の家が建つのかな?」

「狭小土地にこんな高い予算を割くべき?」

「坪単価も、土地価格も高すぎ!」

土地購入の悩みあるあるですね。

例えば住宅購入コンサルタントである私の拠点、仙台近郊で土地を買うとなると、平成初期には平均60~70坪台が主流だった住宅用地販売も、いつしか50坪代が当たり前になり、近年は30坪台の小さな土地物件も目立つ様になりました。

ひとつひとつの土地物件の売値や坪単価もここ10年で随分と高くなり、手頃感のあるものを探そうとすると中々見つからずめげてしまいそうですね。

(東京はじめ大都市圏とは狭小土地、坪単価の高い安いの尺度も違うでしょうが)

そんな苦労を重ねながらも「これは!!」とピンとくる物件に出会えれば飛びつきたくなるのが心情。

でも・・・

そんな時に見落としてはいけないポイントをご存知ですか?

着目点は売値や坪単価、土地の大きい小さいだけではないのですよ。

今回は狭小土地購入の際、覚えておきたい注意点のお話です。

 

 

土地は小さく、坪単価は高く

エリアと広さが理想的な土地情報は全く無いわけではないけど、販売価格が高すぎて予算オーバー…

何といっても

ビックリするほどお高い坪単価!

それが相場なら広い土地を買うなんてムリムリ

小さい土地でガマンガマン

近年の傾向は先にも触れたとおり。

「ひょっとしたら掘り出し物が見つかるかも?」

こんな淡い期待を抱きながらも、現実は中々思う様にはいきません。

それにしても最近の土地物件は

やたらと小さい土地ばかり。

ひとくちに狭小土地といっても、家づくりで希望の間取りを実現しようとするなら土地は50坪~60坪くらいあると2階建ての一戸建てには手頃な広さです。

勿論、地域的な傾向の違いもありますが…

もちろん土地の広さがこれを下回ったとしても、建物を3階建てにするなどの対応策もアリです。

でも建築コストは2階建ての家と比較しかなり割高。

その分、土地が小さいのだから総額は面積がコンパクトな分だけ安く納まっても良さそうですが、むしろ高い坪単価で結局予算オーバー…

中々上手くいきません。

それにしても本来なら制約のある狭小な土地なのに、

坪単価がむしろ広い土地よりも割高に感じるのはなぜでしょうか?

実は住宅用地コンパクト化と高価な坪単価の流れは次の様に理解すると納得がいくはず。

同等な土地条件の80坪と60坪、2宅地の比較で解説しましょう。

80坪の売地
・土地の広さ:80坪
・付近の平均坪単価:30万円/坪
・土地価格:80坪 ×30万=2400万円

 

60坪の売地
・土地の広さ:60坪
・付近の平均坪単価:30万円/坪
・土地価格:60坪 ×30万=1800万円

 

この両者を比較した場合、

80坪と60坪の土地購入の比較では、その価格に600万円の開きがあります。

確かに20坪分の広さは生活環境としては魅力的ですが、何しろ予算的にも600万円もの開きがあれば「何もそこまでの広さはなくても」と、購入をためらってしまいそうですね。

これは反対に売り手の側からみれば、80坪は売りにくい土地ということ。

それならば売り手側としては価格を少し抑え、坪単価の割安感を武器に販売するという方法も考えられるでしょう

しかしながら、それでは肝心の儲けが減ってしまいます。

尚且つそれでも60坪の土地よりは売値は高くせざるを得ませんから、果たして確実に売れるかどうかの不安は完全に払拭できません。

そこでその土地を小さく分割して売ろうと言うアイデアが浮上します。

80坪を2宅地に分けて販売するのです。

40坪2宅地
・土地の広さ:40坪 ×2宅地
・付近の平均坪単価:30万円/坪
・1区の土地価格:40坪×30万=1200万円

 

2区画合わせた売値は2400万円と値下げをせずとも、

今度は逆に1区画あたりの価格が60坪の土地より600万円も安くなりました。

2区画合わせた売値も同じです。

するとこんな考えがひらめきます。

「それなら何もそんなに安く売らず、もう少し高い価格でも売れそう」

「仮に1区あたり100万円高く設定しても売れるのでは?」

こんなソロバン勘定が・・・

小さく切り刻む事で利益が増すのですから、ちょっとした錬金術です。

このスキームが成功事例となると市場全体が右ならえし、住宅用地の狭小地化と割高な坪単価設定の流れがセットで出来上がる。

これが昨今の住宅用地トレンドの背景にあると言えるのではないでしょうか。

 

小さい土地で起こりがちな注意点

さて、その様な経緯から面積が小さく、坪単価が高い土地が目立つ理由はわかりました。

でも市場全体がそこに向かってしまっている以上、それを受け入れ土地購入するしか無いという考え方も一方であります。

但し、前述の通り住宅用地の狭小地化は、土地を小さくする家づくりそのものへのメリットというよりも、あくまでも売り手の事情に端を発しています。

直接的動機は決して買い手本意とは言えません。

それ故に、注意を払わないと色々厄介な課題を抱える売り物件も散見されます。

それでは狭小な土地を購入する際には要チェックすべきポイントを3つご紹介しましょう。

 

 ① 要注意な建築法規

土地購入を終えれば全てが完了ではなく、新築一戸建ての家づくりはむしろそこからが本番です。

いよいよ間取りづくりに本腰がはいります。

どんなアイデアを実現しようかワクワクしてきますね。

でもこの間取りづくり、希望をカタチにするだけでは無く建築法規をクリアしていなければならない事は皆さんご存知なはず。

特に今回のテーマである狭小な土地ほど、間取りなどの企画が建築法規の制約を受けやすくなる点には注意が必要です。

「小さくてもOK」と土地は購入したものの、思い描いた住まいが実現出来ない事を購入後に初めて知る様では大変です。

特に注意すべき法規を2つ押さえておきましょう。

 

 1.建ぺい率、容積率

建築する敷地面積に対する各建物面積の割合が建ぺい率、容積率です。

⚫︎ 建ぺい率=建築面積(建物真上から見た水平投影面積)
⚫︎ 容積率=延べ床面積

 

例えば建築面積50%、容積率80%、土地面積40坪であれば建物上限は以下の様になります。

⚫︎ 建築面積:40坪 ×50%=20坪
⚫︎ 延べ床面積:40坪 ×80%=32坪

 

土地が小さいという事は、建物有効面積の制限が厳しくなる事を意味します。

特に平屋建ての場合の建ぺい率、2階建て以上の場合の容積率には注意が必要。

きちんと敷地内に収まっていても、これらの上限を超えた間取りは建築できません。

イメージしていた間取りに大きく制約がかかるのならば、土地購入の検討にも影響を与えるかもしれませんね。

 

 2.斜線制限

これも、狭小地で間取りを企画する際、大きな制約事になりやすい注意すべき建築法規です。

斜線制限とは隣地境界や道路境界線からの距離と建築する建物の高さの関係に関する規制であり、要約すると次の様なあらましです。

むやみな隣地や道路への接近や過度な高さの建物を建てた場合、隣地の所有者は日照、通風の環境を脅かされる可能性も考えられますね。

この様な事を未然に防ぐ為に建物離れと高さの関係式を定めたものが斜線制限です。

道路斜線制限・隣地斜線制限・北側斜線制限といったものに分類され、建ぺい率、容積率同様に敷地を越境していなくても、建物が一部でも算出した斜線を超えない様に間取りを企画せねばなりません。

今回はこれら斜線制限の詳細は省略致しますが、小さな土地では思わぬところで落とし穴になりやすいので覚えておきたい建築法規です。

 

 ② 間取りが難しい地形

さて狭小地と建築法規の関わりが間取り企画に与える注意点はお分かりいただけましたか。

狭小地の間取り企画に関しては法規以外にも注意すべきポイントがあります。

それは地形の問題です。

地形とは土地の形ですが、多くの方がイメージする様な三角形や台形の様な変形地ばかりが問題ではありません。

四角形でも注意すべき土地があるのです。

それは土地の間口。

ここでいう間口とは「道路から見た奥行き」「道路に面した幅」「南北方向」「東西方向」あらゆる土地の形の状態で、短か手方向の寸法を指します。

単に正方形に近い方が地形が良い土地という話ではありません。

この寸法が一定数値を下回ると、間取りづくりで非常に難儀する可能性が高まります。

ここでは結論だけ申しましょう。

前述の建築法規をクリアした後の状態で、土地間口に合わせた建物間口が

5.46メートル以上確保できないと(尺寸モジュールの場合)

間取りづくりは思う様にすすまなくなる可能性大です。

勿論100%無理という訳ではありませんがかなりの制約ごとになるのは事実。

土地購入の前ならば何もすすんでその様な土地を選ばない方が万全では?

この寸法を覚えておくと転ばぬ先の杖になるかもしれませんよ。

 

 ③ 権利関係が将来面倒かも?

小さな土地購入注意点の最後は権利関係です。

不動産取引は権利関係の状態次第では、無用なトラブルに発展する事も起きる可能性があります。

但しこうした事柄は、業者に義務付けられ契約締結前に書面をもって説明する重要事項説明で知る事ができますので、「うっかり知らずに…」と言う事には通常ならないはず。

誰でも無用なトラブルには巻き込まれたたくありませんね。

しかしながら、一見すると何の懸念も感じなかったのに、後々思わぬ面倒のタネになるかもしれない権利関係の注意すべきポイントがある事をご存知ですか?

これは今回テーマとしている、小さな土地分譲で見られるケースが特に多いので取り上げてみたいと思います。

それは次の様なものです。

土地分譲にあたり、1区画あたりを小さく刻む事で坪単価は高値になり、土地販売業者は好んでこの様な分譲方法を採るメカニズムは先に述べました。

但し、ただ単に面積の帳尻合わせに専念すれば良いというワケではなく、あくまでも分割後の各区画が建築法規を満たせる状態での区割りが必須です。

ここで時に販売業者の頭を悩ませるのが「接道」の問題です。

通常、建物を建築する敷地は、法的要件を満たした道路に最低2メートル接していなければなりません。

しかしパズルの様に、分割を細かにすればするほど接道が厳しい区画が出てくる事があります。

更に最低2メートル接していれば法的にはOKとはいえ、実際にその寸法では車の出入りはままならず、売地としては敬遠対象になってしまうでしょう。

そんな場合の解消策としてよく採られる策が「共有地」です。

いわゆる通路部分を複数区画の所有者で持ち合う、もしくは一見すると普通の一本の通路が、権利上は何本かに分割されており、それらを通行する複数の所有者が個々に所有しているという構図です。

これらは法的には何も問題はありません。

建物を建築する上でこの共有地部分が支障を及ぼす事も通常の一般住宅ではありません。

しかし、こんな懸念が考えられるのです。

まず、この共有地の通路部分は道路ではありません。

ましてや公道ではありません。

単なる通路の形をした私有地です。

当然後々の維持管理は所有者各人に委ねられます。

そこで考えてみましょう。

「もし将来的に他の所有者との関係が円満にいかなかくなったら」

勿論「タラレバ」の範疇のリスクではあります。

こうしたリスクへの懸念や解釈は人それぞれではあるでしょう。

但しこうした将来への懸念材料をリスク視するならば、土地購入時点で知っておかねばなりません。

その上での判断が間違いないのではないでしょうか。

 

狭小土地購入で後悔しない為に

さてここまで土地購入の際、昨今の土地販売のトレンドとでも言えそうな小さな住宅用地の検討の注意点について取り上げてまいりました。

目にする物件目にする物件、高い坪単価と小さな土地面積のセットが当たり前になってくると、土地の広さや価格の高い安いの感覚も自然とそれに慣らされ、当たり前に思えてくるかもしれません。

しかしながら住宅用地の一般的尺度で見れば、土地は小さくなるほど色々と制約事が出やすい事は事実。

そうした中、周囲の高値物件の坪単価と比べ少しでも割安感があったり、物件情報の少なさに焦りを感じていたりすると、今回取り上げた様な課題が潜む土地にも強い興味を持ってしまうものです。

ましてや売り手の不動産業者からも
「先に買い手がついたらそちらが優先です」

「少々狭いですけど予算に合う滅多にない物件ですから・・・」

「間取りは土地を決めた後にジックリ打ち合わせしましょう」

などと急かされればなおさらです。

土地購入の流れは通常建物に先んじて行われます。

土地購入手続きを終えたものの、土地の狭さが想像以上に影響し「思い通りの間取りが出来ない」と気付いては後悔を残してしまいます。

そんな時、ぜひお勧めしたいのが、土地の広さや、坪単価もしくは売値の高い安いといった表面スペックで判断せず、候補に上がったその土地で建物の間取り案を作ってみる事です。

その上で土地購入の可否を判断します。

完全な状態まで完成せずとも、どのくらいのスペックの建物が実現可能なのかが見えてくれば、かなりの安心材料になるでしょう。

「間取りは土地を決めた後で良いんじゃない?」

狭小土地購入でこの流れは避けるのがベストではないでしょうか。

 

この記事の監修<br>パートナーズライフプランニング<br>代表 栗山 琢磨

この記事の監修
パートナーズライフプランニング
代表 栗山 琢磨

仙台で生まれ育ち、大手ハウスメーカー・外資系生命保険会社勤務を通じて得た住宅・不動産・ライフプランの豊富な実務経験と専門資格のスキルをベースに2011年起業。

住宅コンサルタント・家計設計コンサルタントとして相談対応域は住宅ローン・土地探し・間取りづくり・ハウスメーカー選びといった住宅購入相談から学資や老後の資金準備・生命保険相談と皆様のライフプラン全域をカバー。

各テーマの仕組み・課題を解り易く解説。

仙台を中心に貴家の頼れるコンサルタントとしてお手伝いいたします。

・1級ファイナンシャルプランニング技能士
・トータルライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)
・宅地建物取引士
・インテリアコーディネーター

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この記事の監修<br>パートナーズライフプランニング<br>代表 栗山 琢磨

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