住宅購入時に住宅資金計画の進め方は皆さん気になる所では?
住宅ローン借入や自己資金準備の整理を済ませた上で、土地探しや間取り図作成へと向かう進め方の流れが失敗を避ける秘訣とも言えます。
家づくりを何から始めるかといえば正にここからです。
さて、住宅ローンを借り入れるにあたり、検討の進め方や手続きの流れは他のコラム記事でも何度か取り上げておりますが、住宅購入時の住宅ローン関連の話題といえば「住宅ローン控除」も意識されるのではないでしょうか。
住宅コンサルタントの私への相談の場面でも、よくご質問を受ける話題です。
住宅ローン控除とは一定の条件の中で住宅ローンを借入しマイホームを購入した場合、年末時の借入残高もしくは取得価格の低い方の1%を上限に所得税が控除されるというものです。
2019年10月から本年(2020年)の取得は上記の計算が従来の10年間に加え、11年目以降『上記計算』か『税抜き住宅取得価格 ×2% ÷ 3』の低い方の計算分が3年間加わり、計13年となっております。
本来この増えた3年の期間については2020年末までの入居を期限としておりましたが新聞報道によりますと政府は2020年末入居まで延長で準備を進めているとの事です。
さて、この住宅ローン控除ですがハウスメーカーの営業マンにこの件で相談をすると恐らく口を揃えて
「お得です!!」
「期限があるので急ぎましょう!」
と住宅購入の判断にポジティブな材料として解説がなされる事でしょう。
確かに現状で住宅購入の環境が整っているのであればお得な話には間違いありません。
それに加えてこんな話を周囲の知人の方や住宅営業マンから耳にしたことは有りませんか。
「自己資金として投入できる預貯金を一定額所持していた場合、以下の選択は果たしてどちらがお得か?」という問題です。
① 自己資金を住宅購入資金の一部として捻出し、残額は住宅ローンを借り入れる
② 自己資金は温存、全額住宅ローンにて借入、住宅ローン控除を最大限受け後に繰上げ返済
要するに当たり前に自己資金を住宅購入時に支払ってしまう方法(①の状態)に対し、
自己資金は温存し、その分も加えて借入する事で住宅ローン控除額を最大限に活用した後、温存した自己資金で繰上げ返済を実施すれば(②の状態)借入増加分の金利負担は増すが、差し引いても②の方が得をするというロジックの事を指します。
ある程度まとまった額の自己資金を準備された方には興味のある話題でしょうし、そうした方々のご相談の際には「どちらが得か?」と度々登場するご質問です。
住宅営業マン氏にこの問題を相談すると意見が割れる様でが、その相談時の会話の流れを聞くとどちら支持の意見も感覚的な返答に終始している様です。
周囲の知人からの話も同様でしょう。
「あっちが得らしい」「こっちは損するみたい」では確証を持って判断するには心許ないですね。
そこで今回はいったいどちらにメリットがあるのか具体的に検証してみましょう。
⬜︎ 自己資金投入or住宅ローン控除活用比較してみよう
検証の進め方の流れをご説明します。
まず、検証の対象とするモデルを立て、同額の購入物件金額(土地+住宅)を『住宅ローン+自己資金』と『全額住宅ローン』で資金計画を組んだ場合、住宅ローン返済期間を通した返済額と住宅ローン控除額の多寡を比較致します。
また、住宅ローン控除の期間については本年(2020年)と同じく13年とし、検証のモデル詳細は以下の条件で進めて参ります。
■ 購入物件金額4000万円 = 土地1250万円+住宅2750万円(税込)
■ 夫婦連帯債務で借入(夫婦共納税額は住宅ローン控除全額分を満たしている)
■ 融資条件 = 金利0.6%変動金利 , 35年返済(金利の変化は考慮しない)
■ 自己資金の準備額1000万円
■ 年末から借入残高が進行し、毎年の住宅ローン控除額は千円未満切捨てで計算
<モデル1> 住宅ローン借入額3000万円+自己資金1000万円のケース
4000万円の購入物件金額に対し、自己資金が1000万円準備可能であれば残り3000万円を住宅ローンで調達するという、いわばオーソドックスな住宅資金形態の場合です。
夫婦合わせた返済と住宅ローン控除の推移は以下の表の通りです。

● 返済額 : 1~35年 79208円/月 返済総額 3326万円
● 控除額 : 13年間総額 313.8万
<モデル2> 住宅ローン借入額4000万円 ⇨10年後1000万で繰上げ返済のケース
4000万円の購入物件金額全額を住宅ローンで借入し1000万円の自己資金は温存、住宅ローン控除の効果を享受した10年後温存していた1000万円で繰上げ返済する流れ。
なぜ13年間の住宅ローン控除期間に対し10年後に繰上げ返済してしまうのかは下の表をご覧下さい。
11年目から13年目の3年間の控除額がモデル1・2どちらも同額な事にお気付きでしょうか。
この様になる理由は、11年目以降の計算式から土地取得費分が除外され、更に住宅分も減額される為であり、こうなると10年目終了段階で繰上げ返済を実施した方が合理的です。
モデル2の夫婦合わせた住宅ローン控除の推移は以下の表の通りです。

● 返済額 : 1~10年 105611円/月
11~35年 69707円/月 返済総額 3358万円
● 控除額 : 13年間総額 402.2万
<結果>
● 返済額 3326万 ー 3358万 モデル1の方が32万円返済額少ない
● 控除額 313.8万 ー 402.2万 モデル2の方が88.4万円控除額多い
● 総 計 88.4万 ー 32万 モデル2の方が56.4万円効果有る
ここ迄の計算からしますと、ある一定の自己資金を保有している場合には自己資金を温存し積極的に住宅ローン控除を活用した方が得だという考えは正しい様に見えます。
「それならこの方法で!」と結論付けて宜しいでしょうか?
でも・・・・。
視点をチョット広げてみると、一概にその様な結論付けは早計な可能性が見えてくるのです。
⬜︎ アレレ?話が違ってきたぞ
住宅ローン控除の効果と金利負担の関係に対する損得の機械的計算は前項で結果が導き出されましたが、これだけで結論付けずもう少し注意深く考慮を加えるべきポイントが4つ有るのです。
これの評価次第では判断が大きく変わってくる事も・・・。
① 当初10年間の返済額増
マイホーム計画は損得だけで判断しきれものではありません。
まず住宅資金計画を立てるにあたり、住宅ローン返済可能額の上限額を決定する事は全てにおいて基本となります。
その観点からしますと、今回示した2つの対比は住宅ローンの当初借入額が異なる分、毎月の返済額も当然同一ではなく、モデル2は前項の比較では確かに利がありましたが当初10年間は毎月約2万6千円もの高額な返済額を負担しなければなりません。
この策を選択する場合にはこの額が負担可能である事を大前提とします。
またこの際、予算額全体を減額しこれの負担可能額に合わせるという方法が思い当たるかもしれません。
しかし、予算額を減額するという事はマイホーム計画全体のスペックを下げるという事です。
当然土地探しや間取り案、ハウスメーカー選びと計画全体に影響を及ぼします。
そもそも何の為のマイホーム計画か?という点で判断を誤らない様にしたいものです。
② 設定金利の水準でも結果は変わる
先程のシミュレーションは金利0.6%での比較でしたが、金利水準により結果に影響はあるのでしょうか?
設定金利1%の場合で比較してみましょう。(結果だけ示します)
<モデル1>
● 返済額 : 1~35年 84685円/月 返済総額 3556万円
● 控除額 : 13年間総額 316.1万
<モデル2>
● 返済額 : 1~10年 112914円/月
11~35年 75227円/月 返済総額 3611万円
● 控除額 : 13年間総額 405.0万
<結果>
● 返済額 3611万円 ー 3556万円 モデル1の方が55万円返済額少ない
● 控除額 405.0万円 ー316.1万円 モデル2の方が88.9万円控除額多い
● 総 計 88.9万円 ー 55万円 モデル2の方が33.9万円効果有る
この様に0.6%の設定金利と比較した場合56.4万→33.9万と効果が薄れてしまう事が解ります。
つまり変動金利を前提としその後の金利上昇が無いという想定が覆った場合、及びそのリスクヘッジとして固定金利を選択した場合の金利は高い水準となる為、期待した効果は薄れていくという事になります。
勿論、変動金利でもシミュレーション通り適用金利が0.6%とは限りませんので、実際に借入を起こす金融機関の適用金利が今回の計算例よりも高い値の場合も同様の事がいえます。
③ 自己資金と貸出金利
ハウスメーカーの営業マンに住宅ローン金利について相談をすると、一般的に「金融機関毎」「変動金利と固定金利」により金利水準が異なる説明が成されると思います。
でももう一つ適用金利が変わる要因があります。それが自己資金割合です。
自己資金割合が多い融資の場合、固定金利のフラット35の場合は最大で0.2%強、変動金利の銀行融資も0.05%~0.1%程度の金利が設定金利を優遇し引き下げられる事があります。
仮にモデル1の場合に自己資金額投入の効果で、本来の金利0.6%から△0.05%優遇で適用金利0.55%となった場合で比較してみましょう。
<モデル1> 適用金利0.55%
● 返済額 : 1~35年 78540円/月 返済総額 3298万円
● 住宅ローン控除の総額は微細な差しか有りませんので同額とみなします。
● モデル2は冒頭のシミュレーションと同内容です。
<結果>
● 返済額 3298万円 ー 3358万円 モデル1の方が60万円返済額少ない
● 控除額 313.8万円 ー402.2万円 モデル2の方が88.4万円控除額多い
● 総 計 88.4万円 ー 60万円 モデル2の方が28.4万円効果有る
如何でしょうか効果の幅が更に縮まってしまいました。
自己資金割合を考慮した適用金利の優遇が0.1%以上に及べば効果はゼロか寧ろマイナスになってしまい比較上の「損失」が発生してしまうという事です。
④ 所得金額の一時的低下の場合
ご夫婦でご勤務し家計を両輪で支えている場合、ご夫婦の連帯債務、もしくはペアローンで住宅ローンを借入れる事は融資審査上、並びに住宅ローン控除適用範囲の点からも効果が見込めますので、住宅購入にあたり多くの方々が実践されておりますし、相談窓口の営業マンからもその様な勧めを受ける事でしょう。
この事自体には特に問題は無いのですが、1点だけ今回のテーマに関わる部分で注意すべき点が有ります。
それは仮に新築後10年の間にもしお子様の誕生に恵まれた場合です。
もし、そうなれば一定の期間奥様は産休・育休での休職期間を設けられる事が予想されます。
そうしますと、その期間は通常給与は支払われない為、所得に対する課税も成され無い事となります。
住宅ローン控除はあくまでも税額の控除であり課税額の範囲内での還付となる為、その期間中は先に想定した控除額を下回る可能性が出てまいります。
仮にこの期間にお子様2人の誕生に恵まれれば、その期間も2倍になります。
ご夫婦にとり最も望むべきお子様の誕生という喜ばしい出来事に付随する事ですので、その際の控除減額分が考えられるのであれば、予め見込んだ上で今回の策の採用は判断すべきでしょう。
⬜︎ 自己資金投入or住宅ローン控除活用どっちを選ぶ?
さて自己資金額がある程度まとまっている場合の住宅ローン控除の有効な進め方を検証してまいりました。
事前の皆さんの予想と比較して結果は如何でしたでしょうか?
住宅ローンの話だけでは無く、土地探しや間取り図作成等マイホーム計画のあらゆる場面においても言える事ですが、「感覚的」判断への偏りが生じますと「論理的情報」が不足し、結果として判断の合理性を欠き失敗を誘引してしまう恐れが増します。
今回のテーマに関しても冒頭に例えた様に、相談した相手により見解が分かれる事は元より、双方を推す理由が「この方がいいらしいよ」では根拠が希薄過ぎますね。
かといって数字を掲げていれば良いというものでも無く、今回のテーマに関する解説でこんな話を耳にすることもあります。
「住宅ローン控除は借入残高の1%なので住宅ローン金利が1%以下の場合多く借りた方がお得」
「今は13年も控除期間が有るのだから、多めに借りれば3年分更に効果が上がります」
この説明如何ですか?
ここ迄ご覧いただいた皆さんはこれじゃあ納得出来ませんね。
今回例示した様な手順で答えを導き、しっかりと判断したいものです。
また、マイホーム計画には他にも印象と実態の乖離がみられる事は様々有るものです。
皆さんの一大プロジェクトが失敗で終えては大変。確実に成功へと結び付ける為に住宅コンサルタントに相談してみては如何でしょうか。
パートナーズライフプランニングは皆様の家づくりを入口から新築完成までサポートする専門的相談窓口です。
「マイホーム購入サポート」コンサルティングではライフプランを考慮した住宅資金計画から土地探し、間取り案作成、ハウスメーカー選びとトータルでご相談を承りますので、途中で途切れる事が無くご安心頂けます。
また、ハウスメーカーとの相談打ち合わせにも同席致しますので、心強い味方として頼りにして頂ける事でしょう。
初回ご相談は無料となっており、その後の営業もございませんので安心してお試し頂けます。
詳しくはトップページも併せてご覧ください。
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