住宅購入コンサルティングのご相談で、冒頭寄せられるご質問は住宅ローン関連が多いようです。
予算あっての住宅購入であり住宅ローンはその後のライフプランを大きく左右するテーマ故に失敗は許されない事から、様々なリスクと不安が頭をよぎるのでしょう。
また、近年顧客の皆様よりよく寄せられるご相談に投資信託に関するご質問が有ります。
その多くが銀行窓口で「預金より利回りの良い商品が有りますよ」と勧誘を受けたものの、金融商品の知識も無く「どんなもんだろう?」というご相談です。
仙台でのお話が多いのですが仙台外でも同様でしょうか。
ただ単に金利が沢山付くだけなら悪い話では有りませんが、良く解らずに飛びつき失敗し後悔はしたくないと不安を感じてのご相談です。
一見すると全く関係なさそうな両者のご相談ですが、ファイナンシャルプランの視点で見ると実は判断のポイントが全く一緒なのです。
「住宅ローン」と「投資信託」、「借りるお金」と「貯めるお金」どうして一緒なの?と感じられるかもしれません。
その本質的共通性は、どちらも「リスク」と「リターン」という2つの要素が評価のポイントだという事。
これらリスクとリターンはどちらか一方の評価では不十分で、両者を等しく検証しなければならないという点が重要です。
しかしながら、これら金融商品の検討の場で必ずしもこれが実践されていないのが現状のようです。
今回はこの辺りをもう少し掘り下げたファイナンシャルプランのお話です。
専門的お話を少し盛り込みますのでちょっとだけ硬めの話になりますがご容赦ください。
● 金融商品にはリスクとリターンがある
投資信託も住宅ローンも金融商品という点では共通してます。
但しそれぞれ住宅購入と資産運用という風に役割が異なるのはご承知の通りです。となりますと、それぞれを検討する場合の目の付け所も変わってくると思われるのではないでしょうか?
例えば「投資信託」を勧められた際、何の情報が一番気になりますか?若しくは反応はどうでしょう?
「それの金利はどの位?いくら得するの?」
「せっかく預けても損したりしないの?」
「何だかリスクが有りそうで不安」
皆さんの多くの方がこんな感じに反応なさるのではないでしょうか。
実はこれが正にリスクとリターンの概念で有り、無意識にも思考はそこに紐付けようとしているはずです。
しかし、一般に多くの方々がこの時に以下の2点のバランスが欠けているかもしれません
・リスクとリターンの等量的評価
・リスクとリターンの定量的評価
「得する」「損する」すなわちリスクとリターンどちらか一方のみの評価や「何だか不安」と両者を度量化せず感覚頼り評価では適正な判断が出来るはずはありませんね。「同じ位」に「客観的尺度」で評価する事が等量・定量的の意味合いになります。
例えばこれを昨今の市場環境に当てはめて見てみましょう。
お話の題材として株式市場を取り上げます。
● 株価でみると
今年2020年3月に日経平均株価は大きく値を下げました。原因はコロナウィルス感染拡大による経済の先行き不安によるものとされています。2月上旬には2万4000円台にも到達していた株価が3月中旬以降は一時1万5000円台にまで下落したのですからかなりの下落幅です。
この様なニュースを目の当たりにすると株式投資の「リスク」というものが殊更不安に感じる方が多い事でしょう。
投資に失敗する可能性と失敗した時の損失を恐れるからです。
しかし、その後不安定な時期を経過し、6月には2万3000円台にまで回復してきております。
これまたこんなニュースに触れますと「リスク、リスクと騒ぎすぎ。実際元に戻ったし」と、逆に株式投資へのポジティブな材料として受け止める方や、金融商品販売のセールストークとしてこの様な見解を耳にした方もいらっしゃる事でしょう。
どちらの認識が正しいのでしょうか?単に人それぞれ個々の解釈の問題なのでしょうか?
ここでリスク、リターンの両面を偏らず(等量)、度量的(定量)に評価する必要性が登場するのです。
下落をネガティブに捉えた方は株価が下がった事そのものをリスクとして判断し、株価が戻した事自体は「安心材料」にはなり得るけど、でもやはり「下がる事自体が怖い」と「下落」=「リスク」という認識ではないでしょうか。
反対に株価が戻した事をポジティブに捉えた方は、結果オーライで考えればリスクはそう大きなものでは無く、収益性つまりリターンの魅力の方が勝るというスタンスでしょう。
全く正反対の立ち位置の様で実はこの両者、全く判断プロセスが共通しているのです。
● リスク・リターンとは何か?
日常生活の中で我々は時に「リスク」という言葉を使いますが、言葉のニュアンスとしては「危険」に近い様な語彙で口にすることが多いのではないでしょうか?
しかし、ファイナンシャルの世界では「リスク」は定量化され表された可能性を指します。
例えると「危険」かどうか判らないものが「リスク」のある状態であり、「危険」だと判っているものは既に判断が付いているのでリスクでは無いのです。
但し、リスクでないから安全なのでは有りませんよ!単に危険なだけなものだという事です。
なんとなくお解りいただけましたか?
危険かどうか判らないもの、それがすなわちリスクのある状態だという事です。
そして、その「事の大きさ」と「確度」によってそれは計算されます。それが前述の「定量化」という事になります。
ここでリスクを詳細に解説すればリスクを数値化する計算の話に入っていくのですが、かなり専門的な領域まで深入りしますので結論だけでお伝えします。先の日経平均株価下落と、戻しの顛末は「下落」=「リスク」、「戻し」=「安定」とイメージされがちだと思いますが、大きく値を下げたものが更に大きく値を戻すという状態は、変動幅がより大きく価格の安定性(落ち着き)が失われた状態という事になります。
この「変動」「不安定」の大きさがリスクに当たるものなのです。
つまり、リスクは「株価下落」という一般的にネガティブな現象だけが計測の対象では無く、「株価上昇」というポジティブに捕らえられる現象も、それが急激に、過大に起こればリスクの要因とみられるのです。
言い換えれば「下がり続ける」「上がり続ける」のが判っていれば怖くは無いですよね。「逃げれば良い」し「乗り続ければ良い」のですから。そうでは無く「上がるのか下がるのか判らない」状態、これは不安です。失敗するのか成功するのかバクチになる訳ですからリスクになるのです。
そしてそのリスク値に対して見込まれる(期待される)リターン値が見合っていると判断すればGOですし、見合わないと判断すればSTOPという判断が成り立つのです。
つまり感覚的なものを排除し定量的に評価する過程は最終的にGOの人もSTOPの人も一緒。定量的に両者偏り無く評価した上で判断を導くべきだという事であり、その点で今回例示した株価上下の印象が、もしバランスを欠いたものであれば再考の余地が有るという事になります。
● 住宅ローンも同じ?
実はこの株価の例と同様に考えていくべきなのが住宅ローンです。
住宅ローンにもリスクとリターンに当たるものがある事をご存知ですか?
変動金利と固定金利の選択の事です。それぞれ以下の様に解釈出来ます。
<変動金利 > リターン:現状金利水準の返済額/リスク:金利上昇時の返済額増額
<固定金利 > リターン:金利上昇時返済不変/リスク:現状金利水準の返済額割高
住宅購入時に住宅ローンをハウスメーカー営業マンに相談する際、リスクとリターンの両者を定量化した比較に話題が触れましたか?
現在住宅ローンを借入れる際、変動金利を選択している方の割合が圧倒的に多く国交省の統計によると約85%の方が変動金利を採用しておりますが、そこに至るきっかけは不動産会社、ハウスメーカー営業マンからの「オススメ」が強く影響しているのではないでしょうか?
そしてそのオススメ根拠としてバランスのとれた定量的評価が提示されていたかどうかが問題です。
多く聞かれますのは「変動金利のリターン」としての効果(固定金利より適用金利が低い)が強調され、そのリスクについては殆ど語られる事はありません。
その様な指摘に営業マン氏から「もう長くゼロ金利が続いているのに金利上昇なんて想像できない」と反論があるかもしれません。
しかし、「ゼロ金利がずっと続いていてこれからも続く」という見立ては要因分析であり、この様な定性的分析と(定性的分析はゼロ金利の要因分析が本来必要ですが)、定量的分析が混濁した状態で判断してしまうと正しい評価がしにくくなります。
定量的に評価するという事は事実を客観的に見る作業であり、定性的に分析するという事は主観が入り込む余地が有るからです。
これは先に挙げた株価の事例も同じです。何故株価が上がったか下がったかを論じ、その見立てに基づいて後を追うのでは無く、その金融商品の性質プラス面/マイナス面は両者における客観的事実ですので、その事実を踏まえた上で、様々な見解(定性的分析)を加えた方が手堅い判断が出来るのでは無いでしょうか。
以上今回は金融商品を見る上でのリスクとリターン観察の必要性の話をいたしました。
因みに誤解のない様に申し上げますが、定性的分析は無駄だという事ではありませんのでご注意を・・。
定性的分析も重要ですが、多くのテーマで分析結果が一致せず見解が分かれるのはやむを得ない事。
つまりどの話に乗るかで判断が分かれるという事です。その点で定量的なものの観点の方が情報としての共有化がし易いはずなので優先的に取り上げた方が判断が容易だという事です。
出来るだけ難解な話にならない様に努めたつもりですがいかがでしたか。
パートナーズライフプランニングは住宅購入以外にもライフプランをテーマにした「家計設計サポート」のコンサルティングも承っております。
是非ご利用ください。