今回もファイナンシャルプラン(FP)の話題で年金のお話です。
住宅購入をご検討の皆様で公的年金の存在を意識しながら計画をお進めの方はどれ位いらっしゃるでしょうか?
住宅購入と年金?あまり関係ないんじゃないの。というご意見も聞こえてきそうです。
その様な皆様にファイナンシャルプランコンサルタントとしての視点から両者の密接な関係のお話をいたします。
家づくりを意識なさるご年齢といえば30代付近の若い年代の方が中心となりましょうが、世代的に遠い先の老後に日々関心を持つ機会は決して多いとは言えないでしょう。
事実、私が日常皆様の様々なご相談を承る際、住宅購入、家計設計のコンサルティングを問わず、お客様の方から直接的に年金それ自体のご相談事を切り出される事は余り多くはございません。
しかしながらライフプランのコンサルティング上必須な位置づけの課題ですので、私の方からは当然にこの話題について充分な解説を加える事が常です。
変化を感じるのはその後です。
その様な流れの中でこの課題についての問題を提起いたしますと、皆様の関心はほぼ例外なく高いのです。
また一様にその将来性にかねてより懸念されていたご様子。
恐らく、遠い将来のこと故、日常課題意識は高いとは言えないが、潜在的には多くの方が少なからず不安をお感じだったという事なのでしょう。
ではこのご不安の源は何なのでしょうか?
私は情報の不足が要因なのではないかと分析しております。
年金行政が上手く行ってなさそうな気配は皆感じ取れるが、何故上手く行っていのか?どの位影響があるのか?という具体的な部分に触れる機会が有りません。
反面、この問題を可視化できない現状が「なんとかなるんじゃないの」というかすかな楽観視と共存し、どこか我が事として体感しにくい面がある様に思えるのです。
なにせ世界有数の複雑な構造を持つ日本の公的年金制度です。加えて国民に理解りやすく仕組みや現状を周知させる機能が充実しているとはお世辞にも言えない現状ですから無理もない事でしょう。
2019年の夏にも突然2000万問題という報道がテレビを賑わしたのが思い出されます。老後の生計を立てるのに年金だけでは足りなく、他に2000万の蓄えが必要だとした官庁からの報告書が発端となった騒ぎでした。
過去にも同様に小出しで年金不安を示唆するニュースは時折流れてまいりますが、あくまで散発的で問題の本質に関するアナウンスは不充分なままです。
まず、公的年金の将来が何故不安視されているのか、その実体知るためには制度設計の仕組みを把握することから整理したほうが良さそうです。
日本の公的年金制度は俗に以下の三本柱と言われるものを基幹としております。
◇国民皆年金 ・・・ 国民すべてが加入、任意加入ではない
◇社会保険方式 ・・・ 所定の納付額を負担する
◇世代間扶養 ・・・ 現役世代の拠出で高齢世代の給付を支える
そもそも何故問題が生じたか、それはその制度設計の基幹となるものが発足当時の目論見に対して社会情勢の変化により対応しきれなくなってきている事が要因とされております。
プロセスは以下のようなものです。
まず、国民皆年金であるということは本来、人口動態に比例する事で任意加入のそれとは異なり急激な加入者の増減を避けられることから、社会保険方式とセットで考えれば将来の収支見通しは立て易いという事です。 良くも悪くも・・・。
問題はその制度設計下での世代間扶養に目算の大きなズレが生じてしまったのです。
いわゆる少子高齢化の問題です。
少子化の推移と現状をまとめてみますと以下のとおりです。
これの統計は合計特殊出生率で測られます。一人の女性が出産した子の人数を表したものですが、単純化した場合男女比率を1対1とすれば2を下回ると人口は減少してゆく事となります。
この合計特殊出生率は昭和50年以降持続的にずっと2を下回った状態が続き、特にここ直近20年程の間は1.3~1.4前後の状態が続いております。
次に高齢化社会は総人口に占める65歳以上人口の割合を求めた高齢化率という数字によってその水準が示されその値は以下のとおりです。
・1970年 : 7.1%
・2000年 : 17.4%
・2018年 : 28.1%
・2065年 : 38.4%(予測)
つまりは世代間扶養の構造上、給付世代に対する扶助世代割合減少が公的年金の制度設計の環境を満たせなくなる事による制度持続性の懸念、これがいわゆる年金問題という事になるのです。
ではこの問題に対して我々はどの様に備えれば宜しいのでしょうか。
対策のポイントは大きく2点、計画的蓄財と老後の支出抑制策です。
まず蓄財ですが、年金のみの給付で老後の生計を立てる事が困難であると予想される今、真っ先に取り組むべき対応策です。
まず何から始めればとお悩みの方は前々回のライフプラン記事をご参考にしていただければ幸いです。
次に、老後の支出抑制策です。
これは何も老後にいたずらに生活費を切り詰める生活を示唆するものではありません。
いくら貯蓄で資産形成に成功しても無駄な支出がそれを上回ってしまえば穴の空いたバケツ状態になってしまいます。
ここでの無駄な支出とは食費や光熱費等生活基本費用ではなく、老後を迎える前に支出を終える工夫が可能なもの。具体的に住宅ローン返済や生命保険料の負担の事を指します。
無為に負担を老後に持ち越すのではなく現役世代中に払い終える工夫が有効な対策となり、またそれが実行可能なのは老後を迎えるまでの期間という事になりましょう。
この事が今回の本題である年金不安への対策として住宅購入計画が大きく関与してくるというお話に結びついてまいります。
住宅購入に際し予算案の立案検討作業において住宅ローンの返済期間を何年にすべきかという検討とその判断にあたりこの課題を意識して頂くことがより重要だと言うことです。
多くのハウスメーカーや不動産会社の営業マン諸氏はお客様方の年齢を問わず、口を揃えて35年返済を主張しますが、退職後の残債の対応を不確実な余剰金の繰り上げ返済や老後の重要財源の一つとなる退職金でその解決を図るべきなのか充分な検討と判断を加える事がこの課題解決のターニングポイントとなってまいります。
以上公的年金制度のあらましと見通し、またその上での住宅購入計画立案における注意点を取り上げました。
パートナーズライフプランニングのコンサルティングにおきまして、より具体的な細部の情報や対策立案をご提供し皆様のより良いライフプランづくりをお手伝いしてまいります。
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